センセーショナルな作風で知られ、様々な意見を呼ぶアーティスト「ダミアンハースト」。
アートを愛好する方や、現代アート投資を検討している方にとっては常に注目の存在ですね。
しかし、いくつかの代表作は知っていても、作品の持つ意味(コンセプト)までは把握していないという方も多いのではないでしょうか。
やや不気味さ・不穏さを感じながらも、どこか神秘的な要素をもつホルマリン漬けの代表作品や、最近日本で開催され話題となった《桜》シリーズのペインティング、意外に知られていない初期の作品まで、画像とともに解説していきます!
選ばれた20の作品を通して、きっとダミアンハーストの世界が理解できるはずです。
また、ダミアンハーストの作品は大規模なものだけでなく、実は私たちが購入できる価格の作品も存在しています。
作品の値段を知りたい方や、ダミアンハーストの作品を購入したい方に向けてもサイトなどを紹介してまとめているので、チェックしてみてください。
- 1.ダミアンハーストについて
- 2.ダミアンハースト代表作品20選
- 2-1.『Spot Painting』スポット・ペインティングシリーズ
- 2-2.『A Thousand Years』1000年
- 2-3.『The Physical Impossibility of Death in the Mind of Someone Living』生者の心における死の物理的な不可能性
- 2-4.『Spin Painting』スピン・ペインティングシリーズ
- 2-5.『Mother and Child, Divided』母と子、分断されて
- 2-6.『Visual Candy Paintings』ビジュアルキャンディーペインティングシリーズ
- 2-7.『Pharmacy』薬局
- 2-8.『Hymn』讃美歌
- 2-9.『Kaleidoscope』万華鏡シリーズ
- 2-10.『Mandalas』曼荼羅シリーズ
- 2-11.『Who’s Afraid of the Dark?』暗所恐怖症は誰ですか?
- 2-12.『Lullaby spring』子守唄の春
- 2-13.『For the Love of God』神の愛のために
- 2-14.『Mickey』ミッキー
- 2-15.『Verity』真実
- 2-16.『Gone but not Forgotten』なくなったが忘れられなかった
- 2-17.黒いメスの街並み
- 2-18.『Cherry Blossoms』桜シリーズ
- 2-19.『Butterfly Rainbow』蝶の虹
- 2-20.『THE CURRENCY』通貨
- 3.ダミアンハーストの作品の値段・相場
- 4.ダミアンハーストの作品の購入方法
- 5.ダミアンハーストの桜を見る方法
- 6.まとめ
1.ダミアンハーストについて
ダミアンハースト(Damien Hirst)はイギリスの現代アーティストで、同時にコレクター、実業家でもあります。
2022年の3月に国立新美術館(六本木)で大規模な個展が開かれ、ポストされた「桜」シリーズを目にした方も多くいることでしょう。
1990年代のイギリスで活躍し、今現在も活動を更新しつづける気鋭のアーティストですが、近年では日本の現代アートシーンにおいても、その存在感の強さを増しています。
1965年にイギリスで生まれたハーストは、困難な状況で幼少時代を過ごし、86年にロンドン大学ゴールドスミス・カレッジ美術学部に入学。
イギリス美術界の新たなムーブメントとして注目を浴びたのは、88年に廃ビルで学友たちと自主開催した「Freeze」がきっかけです。
頭角を現したハーストは若手のコンテンポラリー・アーティストの中でも代表的な存在となり、生命・死・倫理に関する問題をセンセーショナルな表現で描き出します。
特に、ホルマリン漬けの手法や死骸を使った表現が有名ですね。
中には漫画『ジョジョの奇妙な冒険』のワンシーンになった元ネタをお探しの方もいらっしゃるかもしれません。
ダミアンハーストのホルマリン漬けの作品はジョジョ6部でオマージュされています。
心に切り込んでくるような刺激的な彼の作品であるホルマリン漬け。
誰しもが一度見たら忘れることができず、美術界や一般大衆を巻き込んで話題となって、それぞれの作品に解釈がなされてきました。
次の章では、そんなハーストの作品について、画像とともに紹介&解説していきます。
ハーストは作品で主に”生と死”を扱っており、私たちの生き方が様々なように、彼の作品の捉え方も様々です。
一つの意見として、解説を楽しんで下さると幸いです!
もっとダミアンハースト自身について知りたい方はこちらの記事で詳しく解説していますので、ぜひ合わせてお読みください。
2.ダミアンハースト代表作品20選
さっそくダミアンハーストの作品を紹介していきます!
今回は代表的な作品を20作品選抜し、込められた意味を解説していきます!
ダミアンハーストの作品20選
- 『Spot Painting』スポット・ペインティングシリーズ
- 『A Thousand Years』1000年
- 『The Physical Impossibility of Death in the Mind of Someone Living』生者の心における死の物理的な不可能性
- 『Spin Painting』スピン・ペインティングシリーズ
- 『Mother and Child, Divided』母と子、分断されて
- 『Visual Candy Paintings』ビジュアルキャンディーペインティングシリーズ
- 『Pharmacy』薬局
- 『Hymn』讃美歌
- 『Kaleidoscope』万華鏡シリーズ
- 『Mandalas』曼荼羅シリーズ
- 『Who’s Afraid of the Dark?』暗所恐怖症は誰ですか?
- 『Lullaby spring』子守唄の春
- 『For the Love of God』神の愛のために
- 『Mickey』ミッキー
- 『Verity』真実
- 『Gone but not Forgotten』なくなったが忘れられなかった
- 『黒いメスの街並み』
- 『Cherry Blossoms』桜シリーズ
- 『Butterfly Rainbow』蝶の虹
- 『THE CURRENCY』通貨
2-1.『Spot Painting』スポット・ペインティングシリーズ
ハーストの最も有名な代表作の一つである本シリーズは、白い地に均一に並べて描かれたカラフルな円がアイコニックな作品です。
ハースト本人は、「私は色に対する驚異的とも言える愛をもっており、このペインティング・シリーズはそれを表すために一番いい構造をつくることから生まれた。」と話しています。
一方で、この円は錠剤を表していると解釈され、実際にスポット・ペインティングシリーズでは《Agaricin(アガリシン酸)》など薬剤の名前をタイトルに付けている作品も存在します。
病気を治癒したり、または過剰摂取によって現実から逃れようとしたり、死に近づこうとすることも出来る薬剤。構想段階では ”色”に着目して考えられていましたが、さまざまなパターンで描かれる中で、主題とも言える意味付けが生まれてきたのですね。
2-2.『A Thousand Years』1000年
“Life and death are oppositions, but they are also a cycle.”ーー生と死は対立の存在である。しかし、それらはサイクルでもある。ハーストがこの作品で打ち出している概念です。
誕生、死、腐敗…この作品では、それらのサイクルが行われています。
ガラスケースの中には牛の頭、多数のハエ、殺虫灯、ウジ(ハエの幼虫)を培養するための箱が設置されており、そこから生まれるのは、ハエが牛の頭に卵を産み付け、孵化したウジが牛の頭を食べ、ハエとなり、殺虫灯によって死ぬという流れです。
サイクルを管理するために必要最小限な無機的なガラス、その中では有機物の乱雑な生と死の混合が起こります。
ガラス内をうるさく飛び回るハエと、決して動くことのないウシの死骸。
鮮烈な生と死のコントラストが描き出されているのです。
2-3.『The Physical Impossibility of Death in the Mind of Someone Living』生者の心における死の物理的な不可能性
巨大なショーケースに浮かぶのは、全長4.3メートルのイタチザメのホルマリン漬けです。本作は、ヤング・ブリティッシュ・アーティスト(YBA)ー若きイギリスのアーティストだった20代半ばのハーストによって制作されました。
海の強者であり、時に人間の脅威ともなるサメ。
ホルマリンの中にいるにもかかわらず、よみがえって動き出すかのような臨場感のある口の開き方をしています。
しかし、なぜでしょうか?脅威的に見えながらも、同時に無力で、弱くもろい存在であるかのような側面も併せ持っているように感じられるのです。
タイトルからもさまざまな解釈がなされるように、複雑な事実が入り組んで私たちに訴えかけてきます。
2-4.『Spin Painting』スピン・ペインティングシリーズ
タイトルの ”スピン”にあるように、モーターで回転する大きなキャンバスに絵の具を撒くことで、速度を感じる色彩という新しい視覚の可能性を提示した作品です。
蝶・ハート・ガイコツ・惑星など、円のキャンバスの他にもさまざまな形で展開がされています。
画家が直接筆をおいて描いた作品と、この”行為”とも呼べるペインティングには大きな違いがあると言えるでしょう。ハーストは、機械を自分の身体性と組み合わせることによって、絵画の革新的な領域を探っているのです。
参照:Spinpaintings.com – Damien Hirst spin paintings private collection
2-5.『Mother and Child, Divided』母と子、分断されて
縦二つに切断された状態の牛と子牛をホルマリン漬けにした作品です。切断された牛の間を通ると、体内の内臓の様子をありありと見ることができます。
ハーストの代表的な表現方法であるホルマリン漬けした動物の中でも、本作は最も有名な作品の一つで、ヴェネツィア・ビエンナーレに出品され、1995年にはターナー賞を受賞しました。
母と子とは、言わずもがなとても特別な関係性です。その言葉を耳にしたとき、生命の根源としての象徴、聖母マリアとイエスキリストのように、神秘を感じ、清らかさやあたたかな愛を想起する人もいることでしょう。
しかしこの作品で示されるのは、個体としても二つに分断され、違うガラスケースに封じ込められて決して交わることのできない母と子どもです。
ひしひしと、ハーストの考える生命観が伝わってきます。
2-6.『Visual Candy Paintings』ビジュアルキャンディーペインティングシリーズ
ハーストのスポットペインティングを、「ただの視覚的キャンディー」として批評した美術評論家への直接的な回答として制作されました。
本能に訴え、鑑賞者の感情に呼びかけるこれらの作品は、審美的に楽しい芸術は本質的に重要ではないという含意に疑問を投げかけようとしています。
表向きは抽象的ですが、薬剤のメタファーと言われる円がつぶれて広がっているようにも見え、幸せで気分を高める薬の心理的効果を様式化したように見なすことができませんか?
ハーストはすべて芸術を”人生に関するもの”と捉えています。
表向きはポップで楽観的に見える作品にも、緊張感、不安が根底には流れているのですね。
2-7.『Pharmacy』薬局
イギリスのノッティング・ヒルにあるレストランを薬局のように装飾してオープンしたインスタレーション作品です。
薬品が効く体の部位をそれぞれシステマチックに並べることによって人体が表現されています。芸術と科学を、同じ部屋の中において並列に扱いながらも、現代医療の支配的な力に皮肉も込めたのです。
「人々が医学を信じるように、芸術を信じられたらすばらしいことだ」と言うハースト。本作においては、「人は一生懸命治癒してもいずれ死んでしまう。A Thousand Yearsで表したあのハエのように。」という衝撃的な自身の価値観も表明しています。
本作の第1弾は2003年に閉店しましたが、2016年に第2弾が、ハーストが経営する「ニューポート・ストリート・ギャラリー」内にオープンしました。
2-8.『Hymn』讃美歌
解剖学玩具を5.5mに巨大化し、ペイントしたブロンズの彫刻作品です。
見上げるようなサイズですが、色彩がポップで親しみやすい印象を受けます。
もともとはイギリスの玩具メーカーHumbrol による、Young Scientist Anatomy Setというフィギュアでした。ハーストはそのデザインに最小限の変更を加え、大きさと素材を大きく変更して作品として発表したのです。
タイトル《Hymn》は神への賛美の宗教的な詩・または歌を表し、それによって解剖された裸の人のイメージは、崇拝する対象としての側面を持ちます。
この作品が単なるコピーではなく、芸術作品として成立しているのには、宗教的な意味や美術史を顧みての表現の意味がこめられているからなのです。
しかし、のちに著作権違反として訴えられることとなり、現代アートにおける引用・盗用の意味が問いだたされる作品にもなりました。
2-9.『Kaleidoscope』万華鏡シリーズ
ギリシャ人やクリスチャンに精神や蘇生の象徴とされていた”蝶”のシンボルを使用したこちらの作品は、万華鏡のような図柄が印象を強く与えます。
2001年に絵画《It’s a Wonderful World》の制作にてビクトリア朝のティートレイに触発され、何千ものカラフルな蝶を幾何学模様に配置したのが始まり。
その模様はステンドガラスを彷彿とさせますが、実際に聖堂のステンドガラスをコピーすることもあるといいます。
スピリチュアルな印象を与え荘厳な美しさを感じられる蝶のモチーフ。
芸術における科学の拡張という独自の試みを掲げているハーストにとって、普遍的な価値観の引き金になる具体的なモチーフはとても重要だったのです。
古典的なステンドグラスの絶妙な光を再現するため、蝶は非常に特殊なパターンによって置かれていますが、生命の美しさとはかなさ、自然界のもろさと無常に続くサイクルがよく表されたシリーズです。
2-10.『Mandalas』曼荼羅シリーズ
《カレイドスコープシリーズ》に派生して、ハーストが継続的に追求するテーマの一つが〈曼荼羅(まんだら)〉です。
曼荼羅の起源は仏様の世界や悟りの境地を描くことからで、密教で生まれた絵ですが、宇宙ないしは人の心理の拡張的な表現でもあります。
確かに、じっと見ていると自分が絵の中に引き込まれてしまうような、不思議なあやしげな魅力がありますよね。
このシリーズは主に円形で、複雑な同心円状のパターンにそってやはりカラフルな蝶が敷き詰められて配置されています。
2-11.『Who’s Afraid of the Dark?』暗所恐怖症は誰ですか?
語りかけるようなタイトルが印象的なこちらの作品ではなんと、まるで星のように無数のハエが樹脂を合わせて黒で塗られたキャンバスにコーティングされています。
粘性がありながらもつやつやとした質感を持ち、目をそらしたくも、しかしじっと観ていたくもなるこちらの作品。ハーストは《A Thousand Years》で示したように、ハエと人間の人生を重ね合わせて表現しているのです。
また、「芸術や科学がなければ、人間の人生はハエのようになんと短く、残酷で、醜いものだ」と発言しています。
1997年に初めて試みられた当初の作品は、まだ技術的にも未完成な部分があり、コレクターは異臭に耐えられず、作品を手放さざるを得なかったそうです。
2-12.『Lullaby spring』子守唄の春
《ピルキャビネットシリーズ》のひとつ、この作品では棚に6136錠の薬が並んでいます。
一見すると、カラフルな錠剤は視覚的に楽しく、まるでお菓子に囲まれているようなノスタルジーをも想起させますが、現代社会では薬物依存や薬剤における精神へのダメージは深刻な問題として進行しています。
ハーストの作品はどれも視覚的なアプローチとそれから想起される感情とは相対する側面があり、その不安定さ、そこはかとない不穏さを代表している作品ですね。
タイトルにもあるように鮮やかな色で春が表現されているのですが、新しい始まりや明るいイメージの春と錠剤の独特な雰囲気と意味合いがコントラストになって訴えかけてきています。
この作品は、オークションにおけるハーストの作品で最高落札額を保持しています。
2-13.『For the Love of God』神の愛のために
生と死の価値観に対する、ハーストの根強い関心を顕著に表した作品で、この作品の主題は”メメント・モリ(死を想う)”です。
18世紀に実際に生きた人間の等身大の頭蓋骨を型取ったプラチナに、8601個の純ダイヤモンドが敷き詰められています。
この彫刻作品の正面には大きなピンクダイヤモンドが埋め込まれ、全体にきらびやかで豪奢な印象を与えますが、”死”そのものに直面したときの輝かしく、反抗的または挑戦的な態度としても読み取ることができるでしょう。
2-14.『Mickey』ミッキー
本作はハーストがディズニーに招待されて制作された、単純な円形と色の組み合わせだけで、ミッキーマウスのモチーフだとわかるハーストのキャンバス作品です。
ミッキーマウスはこれまでにも様々な有名アーティスト、特にポップアーティストやストリートアーティストに影響を与えてきたモチーフでもあります。
《スポット・ペインティング》の手法を想起させ、色の力だけで形の本質を解き放っていると言える作品です。
2-15.『Verity』真実
法の書物の上に立ち、正義の天秤を持ち、剣を高く掲げた妊婦のブロンズ像です。この像の半分は、お腹の赤ちゃんがはっきりと見え、妊婦の内部構造を明らかにしています。
イギリスの小さな港に立つこの高さ20.25メートルのブロンズ像。ハースト自身が、モチーフはエドガー・ドガの彫刻《14歳の小さな踊り子》から引用していると言及しています。
母と子どもの関係性、解剖するという医学的な視点、芸術における引用のスタンスなど、ハーストの視点がさまざまに組み合わさった作品なのですね。
2-16.『Gone but not Forgotten』なくなったが忘れられなかった
何をもって”死”を感じるのか、死との距離感とジレンマについて良く表現している作品です。巨大なガラスケースに設置された高さ3メートルの金色に塗られたマンモスの骨格。
絶滅したマンモスが持つ神話的な拡張的イメージを利用し、骨や死骸を見たときに漠然と感じる”死”の現実のイメージを遠ざけようとしています。
一方で、本作は「何かを見るために何かを殺さなくてはいけない」という博物館の宿命的問題をも抱え込んでいるのです。
作品とは人生に関わるものでなければならない、というハーストの考え方は、自身が権威と立場を確立した後でも現代社会の制度、そして自分自身に対しても向けられています。
2-17.黒いメスの街並み
一見すると、上空から見た都市や衛星写真そのもののような本作品は、よく見ると医療用のメスや剃刀の刃、安全ピンなどで構成されているものであることが分かります。
このシリーズでは世界中の都市部―ワシントン、ローマ、リーズ、北京、ニューヨーク―その他17都市が鳥観図的に表されているのですが、紛争が起こっている都市、政治的・経済的、あるいは宗教的に重要な都市が選ばれ、表現されています。
〈生きている都市の肖像〉を表すことを目的とした本作品は、現実に起こっている組織化された爆撃や攻撃への言及とも解釈されているのです。
2-18.『Cherry Blossoms』桜シリーズ
澄み渡った空を背景に満開の花を咲かせる桜の木、日本でも展覧会が開催されて目にした人も多いことでしょう。
2021年7月からカルティエ現代美術財団にて開催された個展で発表された、シリーズ作品です。
無数の点が敷き詰められた桜の花びらを、数枚のキャンバスにわたって壮大に描いており、絵の具そのものとの関係性を見つめなおしたことをきっかけに生み出されました。
本シリーズは遠くから見ると点描的な美しさが際立ちますが、近くに寄ってで絵の具のテクスチャーを観察すると、どこか美しさの中に狂気とはかなさを感じるのです。
ハーストはこれまでにも桜をモチーフにした作品を作っており、自然物に対する絵の具の物質への意識がこのシリーズではよく表現されています。
2-19.『Butterfly Rainbow』蝶の虹
現在では店先などで町中のどこでも目にするようになった”虹”もモチーフになっています。
本作品は、新型コロナウイルスの危機を受けて、NHS(国民保険サービス)や全国の医療従事者に敬意を表して制作されたものです。虹に蝶の羽が敷き詰められるように描かれており、本作はハースト自身のウェブサイトで無料でダウンロードできるようになっています。
現代を生きるアーティストとして情勢に対して敏感に対応したハーストのこちらの作品は限定版も制作されており、その利益は全てNHSに寄付されるシステムです。
2-20.『THE CURRENCY』通貨
一目でハーストの作品と分かる特徴を持ったこの作品。ハーストの新作のNFTプロジェクトで、似通ったデザインで平等に制作された1万点の作品が一枚あたり2,000ドル(約21万円)で販売されました。
通貨と名付けられたこの作品ですが、”果たして芸術作品のどこに価値が存在するのか?”を問いかけている作品でもあります。
このNFT作品を購入した1年後に作品の所有者は、「NFTを物理的な作品と交換してNFTを破棄する」のか、「NFTを保持して物理的な作品を破棄する」のかを選択しなければならないのです。
技術が発達した昨今、真に創造的なものとは何か、本質とは何かを考えさせられますね。
3.ダミアンハーストの作品の値段・相場
ダミアンハーストの作品の値段・相場ですが、例えば買取業者を見てみると、ポリマーグラビュールブロックプリント技法の作品が60万円から70万円前後の値段を提示しています。
また、ジークレー技法の桜は100万円の値段がついていました。
4.ダミアンハーストの作品の購入方法
ハーストの代表作について知り、現代アートの最前線を行く存在のアーティストの作品を購入したいと考える方もいるのではないでしょうか。
これまでのダミアンハーストの作品は大きい規模のものが印象的でしたが、実は手が届く価格帯のものも存在しています!
作品の値段を知りたい方や、ダミアンハーストの作品を購入したい方、ハースト以外の現代アート作品にも興味を持った方におススメのサイトがこちら、Artisというアート専門サービスです。
- 会員登録・月額利用料が無料で利用できる。
- オンライン上で取引が完了。
- 商品に値段が明記されていることから購入するかの検討がしやすい。
- 運営側で出品審査があるため、品質に安心できる。
- 人気ギャラリーからの出展も多数。
などの利点があり、ダミアンハーストの作品も取り扱っています。
またArtisでは、アート売買を通して日本と世界を繋げて活性化することを掲げており、絵画・ポスター・トイ・彫刻など様々なアート作品を取り扱っています。
5.ダミアンハーストの桜を見る方法
日本国内では、2022年3月2日(水)~ 5月23日(月)の期間で、六本木の国立新美術館で個展「ダミアン・ハースト 桜」が開催されました。
現在は閉展しているので観ることができませんが、国内での初めての大規模な個展となったこちらの企画は、107点から成る《桜》のシリーズからハースト自身が24点の大型絵画を選び、展示空間を作り上げたのです。
これまでもさまざまな手法で作品を発表してきたハーストが、現代の作品において過去の美術史を振り返って再解釈するような作品群だということ、そしてその視覚的な美しさへのアプローチの成功は大衆にも評価され、大きな話題を生みました。
また日本でも彼の作品が観られる機会が来る時が、とても楽しみですね。
6.まとめ
絵画、彫刻、インスタレーションなど様々なアプローチで自身の死生観を表現し続け、過激ともいえる手法を使い、観る人に強く訴えかける作品を発表しつづけてきたダミアンハースト。
本記事では彼の作品の中から20作品を選んで紹介しましたが、ショッキングなモチーフを扱ったものでも、その根底には深い考えが隠されていたり、一見明るくポップな作品にも暗い側面をたたえていたりと、幅広い表現の中にも一貫した彼の生きざまが浮かび上がってきましたね。
規定された表現にとどまらない強い意志、常に価値観を疑う姿勢など、ダミアンハーストの作品を理解するうえで大切なことが伝わっていれば幸いです。
また、最近では話題のNFTについてもハーストは敏感な反応を見せています。
技術が発達して刻々と変化する現代アート界のこの後の動向を追っていく上でも、現代社会を私たちが生きていくうえでも、これからも注目していきたいアーティストの1人です。