覆面アーティストであるバンクシーの代表作とも言える『風船と少女』シリーズ。
どんな意味が込められているのか、なぜこんなにも注目され値段が高騰しているのか、どこで買えるのか、あの有名なシュレッダー事件を含めて徹底解説。
1.バンクシー『風船と少女』について
バンクシー『風船と少女』について2つの視点から説明します。
- 風船と少女の意味
- イギリスで最も人気な作品
バンクシーについてはこちらの記事で詳しく解説していますので、ぜひ合わせてお読みください。
1-1.風船と少女の意味
『風船と少女』は少女が赤いハートの形をした風船に向かって手を伸ばしている様子が描かれた作品のシリーズです。
少女の手から風船が離れてしまっているのか、少女が空にある風船を掴もうとしているのか、見る人によって解釈が変わる作品です。
バンクシー自身はこの絵の意味を公表していないため考察になってしまいますが、赤いハートの風船は愛を表していると言われ平和を願う希望の象徴として人気を得ています。
その他の作品の意味はこちらの記事で解説していますので、ぜひ合わせてお読みください。
1-2.イギリスで最も人気な作品
2017年7月にサムスンによってイギリス人2000人を対象に行われた調査では、「イギリスのアーティストの作品で一番好きな作品は何か」という人気投票で1位に選ばれました。
イギリスアーティストによる数々の有名作品を抑えての1位には人気の高さが窺えます。
(2位はジョン・コンスタブルの『乾草の車』、3位はジャック・ベトリアーノの『The Singing Butler』)
1-3「風船と少女」シリーズ 作品紹介
- ロンドン南部のスプレーペイント
『風船と少女』シリーズ1作目はロンドン南部にあるテムズ川沿いの壁に壁画として描かれました。
絵の近くには第三者によって書き足された「THERE IS ALWAYS HOPE」(いつでも希望はある)というメッセージが添えられています。
残念ながらこの作品は現在は残っていないのです。
- 風船の色がゴールド「Girl with Balloon Gold」
こちらは「Girl with Balloon」のリプロダクション作品です。
ゴールドの他にもピンクやパープルの作品も存在します。
- 錆びた鉄にスプレーされた「風船と少女」
この作品は2006年に制作されました。
銅板にステンシルスプレーをした作品です。
元のデザインと違い少女が左側に描かれています。
2.バンクシー『風船と少女』の値段
2006年に制作された『風船と少女』は2018年10月5日に104,200ポンド(当時の日本円にして約1億5千万円)で落札されました。
この作品の額縁をバンクシー自ら選んでおり、落札後あの有名な「シュレッダー事件」により半分が切断されたのです。
この作品はバンクシーのオリジナル作品の中では第4位の落札額になっており、バンクシーのオリジナル作品に対する人気度の高さがわかります。
3.バンクシー『風船と少女』の価値が爆上がりしている3つの理由
バンクシーの作品は近年、価値が大幅に上がっています。
今回は「風船と少女」の価値がなぜ上昇しているか考察してみました。
3-1.シュレッダー事件
先ほど紹介したシュレッダー事件は『風船と少女』が落札した後、遠隔操作によって額縁内にあるシュレッダーが作動し、作品の半分が縦に切断されてしまった事件です。
バンクシーは絵を全て切断する予定でしたが、うまく作動せず半分まで切断された形になってしまいました。
この切断された作品はバンクシー本人によって『Love is in the bin』と名付けられ、落札された時と同じ値段で購入することが決まりました。
オークションを主催したサザビーズは「美術史においてライブ・オークション中に作られた初の作品である」と発表しました。
その後、この作品が2021年10月14日に再びオークションに出品されました。
落札額は約6〜9億円と予想されていましたが、結果約29億円で落札されました。この金額は前回の落札額の約17倍と大幅に価値が上昇した結果です。
バンクシーのオークション落札額ランキングはこちらの記事でランキング形式で紹介していますので、ぜひご参考ください。
3-2.政治的意味
作品のほとんどに強いメッセージが込められており、「風船と少女」も例外ではありません。ここでいくつかの例を紹介します。
3-2-1イスラエルの壁
バンクシーは2005年にパレスチナを訪れ『風船と少女』シリーズの作品をパレスチナとイスラエルを隔てる壁に描きました。
ここでは通常のデザインと違い、いくつかの風船を手にもち、壁を飛び越えようとしている少女の姿が描かれているデザインです。
バンクシーはこの分離壁に対してのちに「この分離壁のせいでパレスチナは世界最大の野外刑務所になった」と回答しています。
バンクシーは『風船と少女』以外にも数々の作品を分離壁に描きました。
3-2-2シリア内戦反戦キャンペーン
シリア内戦が始まってから3年が経った2014年3月15日。
バンクシーはこの節目に『風船と少女』の少女をシリア人の少女に書き換えた作品を発表しました。
この作品とともに#withsyriaのハッシュタグがシリア内戦反戦キャンペーンとしてSNS上に拡散されたのです。
このキャンペーンでは反戦とシリア内戦の犠牲者への支援を求めています。
3-2-3.英総選挙
バンクシーは2017年6月5日に、9日に行われる英総選挙で英保守党以外に投票した有権者に対してプレゼントを渡すと発表しました。
条件はバンクシーの故郷であるイギリス・ブリストルにある6つの選挙区に登録されている有権者で、このプレゼントは風船がユニオンジャックの柄になった『風船と少女』のアートワークです。
このアートワークはキャンペーン資料の記念品で娯楽目的であるため、金銭的価値はなく選挙の選択に影響は及ばさないと自身のWebサイト上で記載していました。
しかし、警察の勧告を受け6日に撤回しました。バンクシーが持つ影響力の大きさを懸念したものと考えられます。
3-3.バンクシーのプロモーション力の高さ
バンクシーの作品全てにおいて価値が上がっている大きな理由はプロモーション能力の高さです。
バンクシーの作品は社会情勢や社会問題などに焦点を当て、強いメッセージを持っています。
また、公共の空間に許可なく描くことから「芸術テロリスト」とも呼ばれています。
この呼び名の通りシュレッダー事件を含め多くのゲリラ的活動を行なっています。
例えば数々の有名美術館に無断で作品を展示してきました。
2005年に大英博物館で無断展示を行った作品は三日間誰にも気づかれずに展示され続けたのです。
のちに大英博物館のエキシビジョンとして正式に展示されることとなりました。
作品だけでなくホテルも手掛けています。
The walled off hotelです。パレスチナ自治政府内にあり、先ほどのベツレヘム分離壁の目の前に建設されたため、窓から壁しか見えず、「世界一眺めの悪いホテル」として知られています。
物々しい構えですがちゃんと宿泊でき、客室は9室用意されています。ロビーラウンジや併設のミュージアムは宿泊しない人でも入ることができます。
The walled off hotel HP内で宿泊予約ができるので、気になった方はぜひ泊まってみてください!
4.バンクシー『風船と少女』レプリカの購入
現在オークション市場に出回っているバンクシーの作品は・オリジナル ・複製画 ・NFTアートとなっています。
彼の人気は年々高まっており、ネットでこれらの作品を購入することは難しく、日本国内で取り扱いのあるギャラリーも限られています。
そこでどうしてもバンクシーの作品が欲しいという方におすすめなのがレプリカです。
レプリカ制作で有名な会社がWCP(West Country Prince)です。
この会社は高い技術を持ってシルクスクリーン技法で制作しており、ほぼ全ての作品にシリアルナンバーが記載されています。
バンクシー自身が公式に認めているわけではありませんが、黙認していると言われています。
このように・紙質も版画のクオリティもオリジナルと比べて遜色がない・バンクシーから一度もクレームが来ていない点からバンクシーコレクターから高く評価されています。
数万円で購入可能なので、なんとしてもバンクシーの作品が欲しい方にオススメです。
5.美術的価値は定まっていないがバンクシーが好きなら所持しておくべき
今回はバンクシーの『風船と少女』について詳しく解説しました。
バンクシーは現在、人気が高く高値で取引されていますが、20年後、30年後のかちがどうなっているかは定かではありません。
今後の投資目的ではなく、バンクシーの作品自体が好きだったり、今の生活様式に合っているのであれば、インテリアの一部としてレプリカを購入するのがオススメです。
Artis内でレプリカの購入が可能となっています。是非覗いてみてください!