シュルレアリストとしてメキシコで活躍した女性画家レオノーラ・キャリントン。
彼女が描く独創的な作品に注目している方は多いと思います。
今回は、レオノーラ・キャリントンの人生を振り返るとともに、代表作を解説します。
1.レオノーラ・キャリントンとは
レオノーラ・キャリントンは、主にメキシコで活躍した画家です。
ここでは、キャリントンの人生を紐解いていきます。
1-1.幼少期
レオノーラ・キャリントンは、1917年のイギリスにおいて織物業者を営む裕福な家庭で生まれました。
幼い頃のキャリントンは、反抗的な態度をとる傾向にあり、複数の学校から退学処分を受けます。
学校に馴染むことができなかったため、修道女として教会で学んだり家庭教師に依頼したりして学を得たといわれています。
また、アイルランド人の乳母から聞いたケルト民話や妖精の話が大きく影響し、現実の世界とは別に不思議な世界が存在することを信じていました。
こうした背景により、キャリントンはオカルトの世界に没入していきます。
美術教育に触れたのは、フィレンツェの寄宿学校に留学した時でした。
1927年、10才になったキャリントンは初めてシュルレアリスムの絵画を目にします。
これ以降、シュルレアリスムに傾倒し勉強を重ねるようになりました。
1-2.マックス・エルンストから受けた影響
1936年、レオノーラ・キャリントンが19才の頃にロンドンで開かれた「国際シュルレアリスム展」において、ドイツのシュルレアリスム画家マックス・エルンストの作品に影響を受けます。
翌年開催されたパーティーでエルンスト本人に出会ったキャリントンは恋に落ちました。
エルンストは妻と別れ、1938年には2人で南フランスに渡り、共同作品を制作しながら互いの美術センスを磨いていきます。
しかし、第二次世界大戦の勃発によりドイツのエルンストはフランス当局に逮捕されました。
友人らの助けにより数週間で釈放されるものの、ナチスが侵入したことで再び逮捕され、レ・ミルの収容所に収監されます。
これらの出来事により、キャリントンはひどく精神を病みスペインの病院に入院しました。
1-3.メキシコでの日々
1941年、レオノーラ・キャリントンは、メキシコ人外交官のレナト・レドックと偽装結婚しヨーロッパからニューヨークへと亡命します。
翌年、レドックとは離婚し、ハンガリー人の写真家であったエメリコ・ヴァイズと結婚。
2人はメキシコに移住し、生涯を過ごすことになります。
メキシコでのキャリントンは、ますます神秘的な世界に夢中になりました。
合わせて創作活動も本格的になり、1948年にはニューヨークにて、1960年にはメキシコ国立現代美術館で大規模な展示を行なっています。
1970年代にはメキシコの女性解放運動に参加して、関連するポスターの制作にも携わるなど晩年も女性シュルレアリストとして確固たる地位を確立しました。
2011年、キャリントンはメキシコシティにおいて94年の生涯を閉じます。
2.レオノーラ・キャリントンの代表作
レオノーラ・キャリントンはシュルレアリストでしたが、男性シュルレアリストが女性のセクシャリティ表現を評価することに対して疑問を抱いていました。
そのため、自分の表現を自己解釈し、第二次世界大戦後にはマジック・リアリズムや錬金術に傾倒しています。
こうした背景もあり、キャリントンの作品はどこかオカルトな雰囲気が漂っている点が特徴です。
また、画家として分類されるアーティストですが、小説家や戯曲家、彫刻家としても高く評価されています。
ここでは主な作品を3つ紹介します。
2-1.耳ラッパ
レオノーラ・キャリントンが綴った代表的な小説のひとつが「耳ラッパ」です。
耳の不自由な老婆がトランペットのような補聴器を友人から贈られたことをきっかけに展開する痛快な冒険物語が描かれています。
2-2.How Doth the Little Crocodile(小さなワニはどのように)
レオノーラ・キャリトンの彫刻作品のひとつが「How Doth the Little Crocodile(小さなワニはどのように)」です。
メキシコシティの街路に佇む彫刻で、街中に数あるさまざまな作家の作品の中でも異彩を放っています。
2-3.マヤ族の不思議な世界
こちらの作品は、1963年にメキシコ国立人類学博物館からの依頼を受けて制作されました。
キャリントンが暮らしていた場所に伝わるマヤ族の話について描いたとされています。
3.まとめ
今回は、不思議な世界観が魅力の女性シュルレアリスト、レオノーラ・キャリントンについて解説しました。
波乱万丈の人生だからこそ生み出された彼女の作風は、現在も非常に人気があります。
また、絵画だけでなく彫刻や小説、戯曲など幅広いジャンルで作品を展開しており、特に小説は複数の作品が邦訳されているので読んだことがあるという方も多いでしょう。
絵画はもちろん、小説からも彼女の人生や人となりが見てとれます。
現在、キャリントンの作品は ニューヨーク近代美術館、ヴェネツィアのペギー・グッゲンハイム・コレクション、ロンドンのテート・ギャラリーなどで展示されているので、ぜひ一度鑑賞してみてはいかがでしょうか。
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