バスキアといえば、ファッション通販サイト「ZOZOTOWN」の創業者である前澤友作氏が約123億円で落札したことで話題となった作家です。
名前は聞いたことがあるけれど、バスキアがどんな作品を手がけているか知らないという方も多いのではないでしょうか。
今回は、バスキアの特徴や代表作などを詳しく解説します。
1.バスキアとは?
バスキアは、1960年にアメリカ・ブルックリンで生まれた20世紀を象徴する新表現主義のアーティストです。
母親が美術教育に熱心だったことが影響し、幼少期からドローイングに興味を持っていました。
家中のものに絵を描いていたというバスキアは、8歳の頃に交通事故に見舞われます。
この時、脾臓を摘出するような大手術となり、入院中に母から贈られた「グレイの解剖学」という本が以降のバスキア作品に影響をもたらしました。
17歳になると、父親に家を追い出されたことをきっかけに、自身が手がけるポストカードやTシャツ安堵を売って生計を立てるようになります。
その後、初めて開催した個展が美術関係者の目にとまり、1980年代に彗星の如く現れたアーティストといわれました。
急性薬物中毒により27歳という若さでなくなりますが、短い期間に3,000点以上ものドローイングや1,000点を超える絵画作品を制作しています。
亡き後も、回顧展が世界各地で開かれておりバスキアの人気は衰えることを知りません。
2.バスキアの絵の特徴
バスキアの絵が非常に高い人気を誇っている理由として、彼の絵が持つ特徴が挙げられます。
主な特徴を詳しく解説します。
2-1.新表現主義
バスキアは「新表現主義」という流れを率いた意味でも有名なアーティストです。
新表現主義とは、1970年代終盤から1980年代にかけて広がった美術の傾向であり、多数の色を取り入れながら荒々しく描きます。
バスキアの絵といえば、キャンバスのみならず適当な紙に落書きのように描かれたものをイメージする方も多いでしょう。
アートに関する深い教養を持ちながら、新表現主義を貫きあえて自由気ままに描いたような作風を導入している点がバスキアの大きな特徴です。
2-2.挑発的二分法
バスキアの大きな特徴として「挑発的二分法」も挙げられます。
挑発的二分法は、「富裕と貧困」や「分離と統合」など相反する概念にフォーカスして絵を描き、対比を強く表す手法です。
バスキアは、挑発的二分法を用いて人権問題や貧困といった社会問題を痛烈に批判しました。
2-3.骸骨と王冠
バスキアが残した多くの絵に共通しているモチーフが骸骨と王冠です。
骸骨は、彼が幼少期に魅了された解剖学の本が影響しています。
一方、王冠は、人種差別がはびこるアメリカにおいて自分の道を確立した有色人種を描き、彼らへの尊敬と権威を表しており、こうしたモチーフから彼の原体験やメッセージを受け取ることができるでしょう。
3.バスキアの代表作4選
バスキアは、たった10年程度の制作期間の間で多くの作品を残しています。
その中から、有名な2点を詳しく見ていきましょう。
3-1.前澤氏が落札した「Untitled」
日本でバスキアが大きく注目されたタイミングといえば、ZOZOTOWNの創業者である前澤友作氏が落札したことが挙げられるでしょう。
2017年5月に開かれたサザビーズオークションにおいて、前澤氏はこちらの「Untitled」をアメリカ人アーティストの歴代最高落札額約123億円で落札ました。
1982年に制作された作品で、バスキアが最も精力的に活動した頃だと言われています。
3-2.バスキアの代名詞「黒人警察官のアイロニー」
バスキアの絵に頻繁に登場する黒人がモチーフとなった「黒人警察官のアイロニー」は、彼の代名詞と言われるほど著名な作品です。
人種差別に対する批判を表した作品を数多く手がけており、こちらの作品でも黒人の警察官が白人社会に抑圧されていることを表しています。
バスキアの特徴である、挑発的二分法を用いた作品のひとつです。
3-3.Flexible
フェンスに使われる連なった板に描いた作品です。
西アフリカにおいて伝統的にコミュニケーションを手がける「グリオ」という人がモチーフになっています。
バスキアの父親はハイチ共和国出身であり、同国は西アフリカから奴隷としてやってきた人たち中心となって立ち上げた国です。
こうしたバスキア自身のルーツを含めながら、人種差別に対する批判を表現しています。
3-4.In This Case
1981年から1983年にかけて描かれた頭蓋骨モチーフの作品は3点存在しますが、そのうちの1つがこちらの「In This Case」です。
前澤氏が落札した「Untitled」とは異なり、頭蓋骨の輪郭が背景に馴染んでいます。
2021年5月に開催されたクリスティーズオークションにおいて、バスキア歴代2位となる約119億円で落札されました。
4.バスキアの絵はどこで買える?
バスキアの絵は、サザビーズオークションやフィリップスオークションなど大手アートオークションにて高額取引されています。
特に1982年に描かれた作品は最も価値が高いとされており、100億円を超える記録的な金額で落札されることもあるほどです。
それ以外の作品も、ほとんどが数十億単位で取り引きされているので、簡単に購入できるものではありません。
とはいえ、実物を目にするという意味では、アートオークションや回顧展などに出向いてみるのもよいでしょう。
4-1.レプリカやグッズについて
もっと身近にバスキアの絵を体感したいという方は、レプリカやグッズを購入するという手段もよいでしょう。
バスキアは非常に人気が高いため、ユニクロやCOACHなどがコラボグッズをリリースしています。
エネルギッシュなバスキアの作品を身につけられるとあって、アートファンのみならず、バスキアを知ったばかりという方にもおすすめです。
5.まとめ
今回は、バスキアの絵について詳しく解説しました。
前澤氏の購入以来、日本でも広く知られるようになったことから、気になっていたという方も多いでしょう。
勢いのある作風や社会に対するメッセージ性、さらに彼の生い立ちなどを知ると、益々興味が湧いてきたという方も多いのではないでしょうか。
現代アートは、一見すると難しいイメージがありますが、バスキアのような「かっこいい」作品を通してアートを楽しむのもひとつの手段です。
亡き後も圧倒的な支持を得るバスキアの絵は、この先も価値が高くなる作品といえるでしょう。