杉本博司とは?作品概念や7つの代表作を解説 | Artis

杉本博司とは?作品概念や7つの代表作を解説

杉本博司
文藝春秋 https://bungeishunju.com/n/nfc01fd02ef00

杉本博司とは表象不可能な時間を写真に収める試みをしていることで有名なアーティストです。

当記事では杉本博司の作品コンセプトや代表作を解説しています。

また、杉本博司の作品を見れる場所も紹介していますので、ぜひご参考ください。

1.杉本博司について

杉本博司

参考画像:HIROSHI SUGIMOTO, THE MASTER OF TIME | TIME IN ART

 

杉本博司は1948年生まれの日本の写真家・建築家・演出家です。

東京およびニューヨークを活動の拠点とし厳密なコンセプトと哲学に基づき作品を制作しているのが特徴。

8×10の大判カメラを使用し照明や構図、現像といった写真の制作過程の技術も評価されています。

76年に代表作『ジオラマ』シリーズを制作し、今日まで一貫して個人の存在を超越した時間の積み重なりや流れを捉えるためのコンセプトや方法を模索した作品を出しています。

1-1.杉本博司の経歴

美容院専門商品の卸売商店の長男として生を受け、立教大学卒業後、70年にロサンゼルスのアートセンター・カレッジ・オブ・デザインで写真を学びました。

74年卒業後にニューヨークに移り、75年から写真作家として生きることを決意し自らのスタジオを構えました。

76年に最初のシリーズ『ジオラマ』を1枚ニューヨーク近代美術館の写真部門に持ち込み評価されたのが最初です。

このことによって1年単位の奨学金を得、写真作品を制作。

奨学金が終了したのち日本とニューヨークを往復しながら古美術品を買い販売する生業を10年営み、古美術や古建築、古典文学の造詣を深めました。

77年東京に初の個展を開き、81年にニューヨークで開催。

2001年にはハッセルブラッド国際写真賞を受賞し欧米を中心とした世界各地の美術館で個展を開催しています。

2017年には10年の構想と建築に10年、計約20年の歳月を投じた複合文化施設「江之浦測候所」が完成したのです。

詳しくは後述しますが日本の多様な時代様式の建築や石庭、ローマ劇場のような舞台を作り透明なギャラリーや透明な茶室なども設け直島の有名スポットとして名を馳せているのです。

杉本博司は「古代人が思い描いた生命のビジョンを自身の思想をからめながら再現し、現代人が改めて感性を育み、人生の意味を考える場所」と述べています。

2017年には文化功労者として選定され、直近では「杉本博司ー春日神霊の御生(みあれ) 御蓋山そして江之浦」が春日大社国宝殿にて開催するなど現在でも精力的に第一線で活躍しています。

2.杉本博司の作品コンセプト「時間」とは?

モダニズムの立場に立ち続けている杉本博司は

「真実らしさで満ちている世界では、写真が真実を写し出すことはない」と

しつつ「写真は嘘をつかせない」と技法においてはピクトリアリストに接近しているものの「ポストモダン時代を経験したポストモダン以前のモダニスト」を自認しモダニズムの倫理を守ろうとしています。

写真において差し引きを行わず嘘をつかせないために人為的かつ嘘と明白なジオラマや蝋人形を撮影したり表象不可能な「時間」をコンセプトに作品を制作しているのです。

杉本博司は人間が見れる共通かつ普遍的な風景を模索し以下の問題を提議し海景シリーズを制作しました。

  • 「人類が最初に見た風景は海ではなかっただろうか」
  • 「海を最初に見た人間はどのように感じたか」
  • 「古代人の見た風景を現代人が同じように見ることは可能か」

時間の経過によって人為的な「物語」が失効しているのです。

3.杉本博司の7つの代表作

杉本博司のコンセプトを解説しました。

ではどのような作品を手がけているのでしょうか?

杉本博司の代表作を7つご紹介します。

  • 海景
  • 劇場
  • ポートレート
  • 蝋人形/恐怖の館
  • 陰翳礼讃
  • ジオラマ
  • 建築

3-1.杉本博司の代表作①海景

杉本博司 海景

出典:tagboat https://www.tagboat.com/products/detail.php?product_id=43295

 

『海景』は1980年ごろに発表された杉本博司の代表作です。

世界各地の水平線を上(空)下(海)を均等にグレースケールで撮影したもので空と海の他何も存在しない世界観はミニマルアートの表現とされています。

海景についてはこちらの記事で詳しく解説していますので、ぜひご参考ください。

杉本博司「海景」を経て現代人に伝えたいテーマ・コンセプトに迫る

3-2.杉本博司の代表作②劇場

杉本博司 劇場

HIROSHISUGIMOTO
https://www.sugimotohiroshi.com/

米国各地のドライブインシアターや古い劇場で撮影する『劇場』シリーズ。

杉本博司のコンセプト『時間』の表象が表れた作品で、映画まるまる一本上演されている間、カメラを露光した結果、真っ白になったスクリーンとその光に照らされた劇場内部が収められています。

3-3.杉本博司の代表作③ポートレート

杉本博司 ポートレート

HIROSHISUGIMOTO
https://www.sugimotohiroshi.com/

 

展示されている偉人・有名人の蝋人形を撮影し肖像画のように撮影した作品です。

後に紹介する『ジオラマ』シリーズと共に生命のないものをカメラに収めることで私たち現実世界に生きる人間を撮影したかのように見えます。

3-4.杉本博司の代表作④恐怖の館

杉本博司 恐怖の館

HIROSHISUGIMOTO
https://www.sugimotohiroshi.com/

 

古来人間にとって死とは必ずしも恐怖の対象ではなかった」というコンセプトのもと制作されたシリーズでルイ16世とマリーアントワネットの処刑に使われたギロチンの刃や電気椅子にかけられる蝋人形をカメラに収め、現代に生きる我々に古代人と同じように死を直視する機会を与えるシリーズです。

3-5.杉本博司の代表作⑤陰翳礼讃

杉本博司 陰翳礼讃

HIROSHISUGIMOTO
https://www.sugimotohiroshi.com/

暗闇の中一本のろうそくが燃え尽きるまで撮影した『陰翳礼讃』。

ろうそくの火が燃え上がる光の帯と影だけと最小限のものだけを写し取った作品です。

3-6.杉本博司の代表作⑥ジオラマ

杉本博司 ジオラマ

島根県立美術館ミュージアムショップ
https://www.sam-museumshop.shop/shopdetail/000000000060/

『ジオラマ』は杉本博司の原点的な作品シリーズで展示されている古代生物や古代人を再現したジオラマをカメラに収めたものです。

遠近感が喪失し、一見すると本物の動物や古代人を撮ったようなリアル感を味わえます。

「写真はいつでも真実を写す」という観客の固定概念を覆すシリーズです。

3-7.杉本博司の代表作⑦建築

杉本博司 建築

IMA
https://imaonline.jp/news/exhibition/20180731/

『建築』はモダニズム建築を焦点を無限遠の2倍にして撮影しぼやけさせた結果、建築家が妥協し付け加えた装飾やディティールが取り除かれ当初構想されていたフォルムだけが写真に残されるモダニズムの誕生と展開を検証しようとした作品です。

4.杉本博司の作品を見れる場所3選

彼の作品制作における哲学をより知るには実際に作品を見ることが一番でしょう!

そこで杉本博司の作品を生で見れる場所を3つご紹介します。

  • 【姫路県】姫路市立美術館
  • 【神奈川県】小田原文化財団江之浦測候所
  • 【直島】杉本博司ギャラリー 時の回廊

4-1.【姫路県】姫路市立美術館

杉本博司の作品

ARTAgenda
https://www.artagenda.jp/exhibition/detail/7538

現在、姫路市立美術館は「杉本博司展 本歌取り-日本文化の伝承と飛翔」を2022年9月17日(土)〜2022年11月6日(日)まで開催しています。

日本文化の伝統とは旧世代の時代精神を本歌取りすること、つまり古い時代の感性や精神を受け継ぎそこに新しい感性をエッセンスすることで育まれてきたものであるとの杉本博司の考えのもと、重要文化財とその本歌取りである杉本博司の作品が展示されています。

2023年3月、現在、閉展しています。

  • 会期 2022年9月17日(土)〜2022年11月6日(日)
  • 前期:9月17日(土)~10月10日(月・祝)
  • 後期:10月 12日(水)~11月6日(日)
  • 会場 姫路市立美術館 Google Map
  • 住所 兵庫県姫路市本町68-25
  • 時間 10:00〜17:00 (最終入場時間 16:30)
  • 休館日 月曜日 
  • 9月20日(火)、10月11日(火)
  • ※ただし9月19日、10月10日は開館
  • 観覧料 一般 1,200円(1,000円)
  • 大学・高校生 600円(400円)
  • 中学・小学生 200円(100円)
  • TEL 079-222-2288

4-3.【神奈川県】小田原文化財団江之浦測候所

杉本博司 小田原文化財団江之浦測候所

ODAWARAARTFOUNDATIOM
https://www.odawara-af.com/ja/enoura/

日本文化の発信の地として構想10年建築10年の歳月をかけ2017年に開館した施設です。

緑と海に囲まれた「江の浦測候所」では杉本博司による現在では継承が困難になりつつある伝統工法の他、常設展示を鑑賞できます。

  • 休館日 火・水曜日、年末年始および臨時休館日
  • 午前の部: 10:00~13:00
  • 午後の部: 13:30~16:30
  • 入館料 3,300円(当日券をご利用の場合(2022年7月1日より再開)3,850円)

アクセスはこちら▼

4-3.【直島】杉本博司ギャラリー時の回廊

杉本博司の作品を見れる直島

画像:杉本博司ギャラリー 時の回廊 ラウンジ風景、2022年 撮影:森山雅智

杉本が日本で活動する中で縁の深い場所の一つが香川県・直島。

アート的な建築の集大成であり、杉本が自身の”遺作”として位置づける 《江之浦測候所》を小田原に創設。

このような長年の取り組みの集大成として、創作活動のひとつの原点とも言える直島と江之浦を繋げる形で構想されたのが、この「時の回廊」です。

《江之浦測候所》が建築と作庭などが中心となっているのに対し、このギャラリーは、杉本博司の代表的な写真作品やデザイン、彫刻作品などを継続的かつ本格的に鑑賞できる世界的にも他に例をみない展示施設です。

  • 開館時間:11:00-15:00(最終入館14:00)
  • 休館日:年中無休 開館カレンダー(開館カレンダー | ベネッセアートサイト直島 (benesse-artsite.jp))をご参照ください。
  • 鑑賞料金:1,500円 *呈茶(お茶とお菓子)付き。
  • ※15歳以下の方とベネッセハウスに宿泊の方は鑑賞無料。その場合お茶は別料金。
  • 所要時間(滞在時間):1時間〜2時間ほどあればゆったりと観て回ることができます。
  • アクセス:香川県香川郡直島町琴弾地(ベネッセハウス パーク内)
  • 直島は高松港からはフェリーで約50分、宮浦港に向かい、宮浦港からは約3.6キロほど。車で10分、徒歩では40分ほどかかるようなので、車やタクシーの利用を視野に入れた方がよさそうです。
  • 駐車場:公式駐車場はありません。ギャラリーから歩いて10分弱の所に、直島町営駐車場があります。
  • 電話番号:087-892-3223(ベネッセハウス)

アクセスはこちら▼

杉本博司ギャラリー時の回廊についてはこちらの記事で詳しく解説していますので、ぜひご参考ください。

杉本博司ギャラリー時の回廊施設紹介

5.まとめ

今回は杉本博司についてや彼の作品におけるコンセプトや代表作を紹介しました。

  • 海景
  • 劇場
  • ポートレート
  • 蝋人形/恐怖の館
  • 陰翳礼讃
  • ジオラマ
  • 建築

私としては杉本博司のコンセプトをより肌で感じるために作品をご自身の目で見にいくことをおすすめします。

最後に杉本博司の作品が見れる場所も紹介しましたので、ぜひご参考ください。

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