オスカル・ドミンゲスは、スペインの代表的な画家のひとりです。
シュルレアリストとして作品を生み出し、シュルレアリスムの技法であるデカルコマニーの発案者でもあります。
今回は、オスカル・ドミンゲスの生涯を紐解きながら、デカルコマニーの概要やドミンゲスの代表作を解説します。
1.オスカル・ドミンゲスとは
まずは、オスカル・ドミンゲスの生涯や影響を受けた人物について解説するとともに、彼が発案したデカルコマニーについて紹介します。
1-1.生涯
オスカル・ドミンゲスは、1906年にスペインのカナリア諸島に位置するテネリフェ島で生まれました。
祖母のもとで過ごした幼少期に患った大病が原因で、顔の骨格や四肢が変形します。
こうした苦難を乗り越え、1924年頃から独学で絵を制作するようになりました。
21才になったドミンゲスは、芸術の都パリに移住し、農産物貿易商だった父の仕事を手伝います。
その後、複数の美術学校に通ったり、美術館を巡ったりしながら絵画のスキルを磨きました。
1928年に兵役のため一度故郷へ戻りますが、翌年には再びパリへ渡ります。
1931年に父親が亡くなったのを機に、広告のイラストを描いて生計を立てるようになりました。
その後、前衛的な画家に惹かれていったドミンゲスは、シュルレアリストとして制作を続けます。
最初にシュルレアリスムの作品を描いたのは1932年のことでした。
以降、複数の展示会に参加しその腕を上げていき、広くその名を知られるようになります。
しかし、ドミンゲスはその生涯を全うすることなく、1957年に自死という道を選びその生涯を自ら閉じました。
1-2.パブロ・ピカソの影響
前衛的な作品に傾倒していたオスカル・ドミンゲスは、パブロ・ピカソの影響を大きく受けています。
ドミンゲスのシュルレアリスト作品をみると、早い段階からピカソの影響が反映されており、いかに惹かれていたかがわかるでしょう。
そのほか、シュルレアリスム宣言を説いたアンドレ・ブルトンとの交流もありましたが、ブルトンとは戦後に追放されています。
1-3.デカルコマニーの発案者
オスカル・ドミンゲスといえば、デカルコマニーの発案者としても知られています。
デカルコマニーとは、シュルレアリスムの技法のひとつです。
「転写」を意味するフランス語で、紙などの媒体に画材を垂らし、乾く前に別の素材に押し付けて模様を描きます。
予期せぬデザインが生まれる点が特徴で、ドミンゲスに限らず多くのシュルレアリストたちが活用しました。
2.オスカル・ドミンゲスの代表作品
ここでは、オスカル・ドミンゲスの代表作品のうち2点を紹介します。
2-1.ライオン—自転車
ライオンと自転車がひとつになった不思議な作品です。
1936〜1937年に制作されたもので、オスカル・ドミンゲスの真骨頂ともいえるデカルコマニーの技法が使われています。
2-2.自画像
オスカル・ドミンゲスが、25才の頃に描いた自画像です。
変形したドミンゲスの手とリストカットした様子が表現されています。
ドミンゲスは、51才のときに手首を切って自殺しますが、この悲しい結末を暗示しているかのような作品です。
2-3.ローマの肖像
オスカル・ドミンゲスの作品は現在も注目を集めています。
アートオークションに出品されることも多く、高値で落札されるケースも少なくありません。
こちらの作品は、2014年のクリスティーズオークションに出品された「ローマの肖像」です。
腕が切り落とされ手首だけがピアノを弾く様は、見るものに不穏な印象を与えます。
オークションでは、902,500英ポンドで落札されました。
3.オスカル・ドミンゲスの作品が鑑賞できる場所
オスカル・ドミンゲスの作品は、日本の美術館でも鑑賞できます。
主な美術館は以下の2つです。
3-1.横浜美術館
横浜美術館は、高層ビルが群立するみなとみらいの真ん中に位置する施設です。
都会であることを忘れるような緑あふれる空間にあり、訪れる人をリラックスさせてくれます。
ルネ・マグリットやダリ、ピカソなど多数の近代画家の作品を展示しており、オスカル・ドミンゲスもそのひとつです。
現在は大規模改修につき閉館中ですが、2024年3月14日には改修が終わり新たな魅力を発信する場所として生まれ変わります。
3-2.宮崎県立美術館
宮崎県立美術館は、故郷にゆかりがある作品に加えて、シュルレアリスムやキュビズムなどの代表的な作家の作品も所蔵しています。
その中にあるのがオスカル・ドミンゲスの油彩作品「地獄の機械」です。
代表作のひとつでもあり、日本で見られる貴重な施設なので、ぜひ訪れてみてはいかがでしょうか。
4.まとめ
今回は、オスカル・ドミンゲスの概要や代表作を紹介しました。
シュルレアリスムの表現に多く取り入れられる技法「デカルコマニー」の発案者でありながら、幼少期に患った大病を長く引きずり、結果的に自殺にまで追い詰められるという悲しい生涯を過ごした画家です。
ドミンゲスの作品には、こうした彼の胸の内が反映されており、現代においても多くの人を魅了しています。
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