世界3大名作のひとつ「夜警」で知られる画家レンブラントは、一生をかけて100枚の自画像を描いています。
今回は、レンブラントが多くの自画像を描いた理由に迫るとともに、時代ごとの作品を紹介します。
1.レンブラントとは
レンブラントは、1606年にオランダで生まれたヨーロッパの美術史における重要な画家です。
「光と影の魔術師」と呼ばれることもあり、コントラストの強い作風で多くのファンを魅了しています。
代表作「夜警」からも分かるように、光と影の表現に関しては、レンブラントに勝つ者はいないといわれるほどです。
2.レンブラントが自画像を書いた理由
レンブラントは、約40年の画家人生において、絵画やエッチング、ドローイングを含む100枚もの自画像を描いています。
多くの画家が、自画像を手がけていますが、これだけ多くの作品を描いた人物はいません。
特に、レンブラントが活躍した時代は、依頼されたテーマで絵を描くことが一般的でした。
自画像を頼まれることは想像しづらい中で、これだけ多くの自画像を描いたのはなぜでしょうか。
現在残っている資料に、その理由を示すものはありませんが、絵の研究のために描いたのではないかといわれています。
また、人生における自分の変化を絵にして表現したという説もあります。
3.レンブラントの自画像
レンブラントの自画像は、時代によって特徴が異なります。
続いては、「青年期」「壮年期」「老年期」に分類して、各時期の自画像を紐解いていきましょう。
3-1.青年期の自画像
レンブラントが自画像を描き始めたのは、23歳の頃でした。
初めての自画像は、当時の絵では表現されることのなかった、多方向から光が当てられた様子と、それによって落ちる影の描き方を実験するための要素が強く現れています。
そもそも、レンブラントはドイツ・ルネッサンスにおける巨匠アルブレヒト・デューラーや画家の王と称されたルーベンスに興味を示していました。
彼らも多くの自画像を描いていますが、レンブラントのほうが遥かに多く作品を残しています。
3-2.壮年期の自画像
青年期の自画像は、顔に影のかかっている作品が多く、どちらかというと自分に自信がなかったのではないかともいわれています。
一方、壮年期になるとエレガントな衣装を纏い、堂々と鑑賞者を見つめる作風に変わる点が特徴です。
実際、レンブラントにとって壮年期である34歳ころは、画家として好調な時期でした。
肖像画家としても人気があり、豪華な自宅兼工房を購入しています。
そして、かの有名な「夜警」も、この時期に描かれたものです。
この背景から、壮年期の自画像に溢れる自信が表現されていることにも頷けるでしょう。
3-3.老年期の自画像
老年期は、レンブラントにとって苦しい時代でした。
「夜警」を描いたのち、最愛の妻を亡くしたのです。
さらに、元来浪費癖があったため、莫大な借金を抱え、最終的には破産してしまいます。
こうした中でも、レンブラントは自画像を描きました。
老年期の自画像として有名な作品のひとつが「聖パウロに扮した自画像」です。
憂鬱な表情からは、人生に対する諦めとも悟りとも捉えられる複雑な心のうちを想像させます。
また、「パレットと絵筆を持つ自画像」も有名な老年期の作品です。
署名や年記が記載されていないため、未完の作品ともいわれています。
このように、レンブラントは63歳で亡くなるまで自画像を描き続けました。
4.まとめ
今回は、レンブラントの自画像にスポットを当てて紹介しました。
波乱万丈なレンブラントの人生が、自画像にもよく現れていることが分かるでしょう。
「夜警」をはじめとする数多くの優秀な作品を残しているレンブラントですが、あえて、自画像に絞って鑑賞してみるのもおすすめです。