今回は日本の現代アートを代表する42名のアーティストをご紹介します。
各アーティストの代表作や、現代アートの中でも特に若手に注目すべき理由なども触れていますので、ぜひご覧ください。
1.日本人に現代アートは不向きなのか
現代アートは、古くから続く伝統的な技や作法を踏まえたアートとは異なり、先進的なアイディアから生まれる表現です。
現代アートが生まれる以前は、作品の美しさや素晴らしさを受動的に感じるケースがほとんどでしたが、現代アートは鑑賞者が作品を通して思考を巡らし感想を持つことに意味があります。
今や、キャンバスの上だけが表現の場ではなくなり、デジタルや音楽、立体なども現代アートのフィールドとなりました。
形式を重んじてきた日本人にとっては難解なアートと感じる方も多いでしょう。
しかし、近年の現代アートにおける日本の市場は拡大傾向にあり、文化庁でも「アート投資」を推進しています。
こうした背景もあり、日本でも現代アートが盛り上がりつつあるといえるでしょう。
2.日本人現代アーティスト21選【男性編】
日本人の中にも注目すべき現代アーティストが多数みられます。
まずは、男性の現代アーティストのうち21名をご紹介します。
2-1.KYNE
福岡県で生まれ、現在も福岡を拠点に活動をするKYNE。
デザイン科専攻の高校に進み、大学絵は日本画を学んでいます。
その後、地元でストリートアートを描いていたところ脚光を浴び、2006年ごろからアーティスト活動を本格的にスタートさせました。
大学時代に得た日本画のスキルが落とし込まれた作風は、余計なものが削ぎ落とされたシンプルな表現が特徴的です。
2010年ごろには、現在のスタイルであるクールな表情の女性をモチーフとした作品が確立しました。
KYNEが描く女性は「KYNE girl」と呼ばれています。
ストリート界隈から認知度が上がり、2018年にはCasa BRUTUSの表示を飾りました。
以降、シンガーソングライター「iri」のEPジャケットを手がけるほか、渋谷「RAYARD MIYASHITA PARK」内にあるアートスペース「SAI」で個展を開くなど、活動の場を広げています。
2-2.奈良美智
奈良美智は、特徴的な鋭さを持つ目つきの少女のイラストや彫刻や巨大な犬をモチーフにした作品で有名な現代アーティストです。
青森県で生まれ、弘前高校を卒業したのちに武蔵野美術大学に進学しますが、ヨーロッパとパキスタンへ放浪の旅をしたことがきっかけで学費が払えなくなり退学。
その後、愛知県立芸術大学に入学し直し、大学院修士課程まで進みました。
卒業後はドイツに留学し、ドイツ新表現主義美術の中心人物であったA.Rペンクに師事しています。
1994〜2000年にかけて、ドイツ・ケルン郊外にアトリエを構えた奈良は、作品制作に勤しみ、ヨーロッパだけでなく日本でも個展を開催するようになりました。
現在は、言わずとしれた世界でも有数の日本人現代美術アーティストであり、様々な美術館で作品を見られるほか、ぬいぐるみやTシャツ、ポスターなど身近なグッズでも人気があります。
2-3.山口歴
山口歴は、東京都で生まれ現在はニューヨーク・ブルックリンを拠点に活躍する現代アーティストです。
両親は、ファッションデザイナーであり、山口歴本人も幼少期から絵を描くことが好きだったといいます。
特に、漫画家「鳥山明」に憧れを抱き、小学校時代は絵画教室に通っていました。
教室では、印象派の西洋画に触れ、歴史的な画家たちの技法に興味を持つほか、ストリートのグラフィティにも惹かれていきます。
その後、父親が経営するブランドのデザインスタジオを手伝う中で、様々なクリエーターたちに出会い刺激を受け、2007年にニューヨークを拠点に活躍する現代アーティスト松山智一のアシスタントになりました。
作風として特徴的なのが、ストリートカルチャーから影響を受けた「カットアンドペースト」という技法です。
代表作は「OUT OF BOUNDS」シリーズで、ブラシストローク自体がキャンバスとなっています。
現在は、ファッションブランドとのコラボレーションでも人気を博しており、国内問わず人気のアーティストです。
2-4.平子雄一
平子雄一は、岡山県出身で現在東京を拠点に活躍しています。
イギリスのWimbledon College of Art, Fine Art, Painting学科で学び、日本だけでなくコペンハーゲンやシンガポール、台湾、韓国など世界各国で発表を続ける気鋭の現代アーティストです。
植物と人間の共存について、そしてその関係性の中に浮かび上がる疑問をテーマに創作を続けています。
街路樹や観葉植物などのように、人間にコントロールされている植物に対して「自然」を定義することに違和感を覚え、現代社会の中で自然と植物との境界線がどこにあるのかを考えるきっかけを作品を通じて与え続けている点が大きな特徴です。
平子の作品には、頭部がクリスマスツリーのようになっている人物が多く登場し、平子はこのキャラクターを「彼」と呼んでいます。
「彼」は、アートの一部でもあり、自分の一部でもあり、鑑賞する人でもあるという考えのもと、平子の作品の核として私たちに植物と人間との共存について考えさせてくれる存在です。
2-5.村上隆
日本を代表する現代美術アーティストといえば、村上隆をイメージする方も多いでしょう。
東京都出身の村上は、東京藝術大学で日本画を専攻し、美術研究科博士後期課程をしています。
今や、日本の現代美術における巨匠でもあり、1990年代には日本のサブカルチャーをアートに昇華させ世界に広めた草分け的存在です。
現在は、アートの総合商社「カイカイキキ」の代表として、自身のアート作品を作るだけでなく、後進の発掘や育成にも力を入れています。
代表作としては、笑顔を浮かべる花のモチーフが挙げられ、ルイ・ヴィトンとのコラボとしても有名です。
そのほか、ドラえもんやユニクロとのコラボ商品もあり、優秀なビジネスマンとしても高く評価されています。
2-6.花井祐介
花井祐介は、神奈川県出身でアメリカ、フランス、台湾などグローバルに活躍するアーティストです。
20代前半にバイトをしていた湘南のバーで看板にイラストを描いたところ、カリフォルニアのギャラリー「The Surf Gallery」のオーナーにその才能を見出されます。
この出来事がきっかけとなり、アメリカでのグループ展や横浜で開かれる音楽とアートのイベント「グリーンルーム フェスティバル」などに参加したことで、広く注目を集めるようになりました。
愛嬌のある男性をモチーフにしたユーモアのある独自の作風は、アート界だけでなくBEAMSやVANS、NIXSONなどファッション業界とのコラボレーションでも評価を得ています。
2-7.松山智一
松山智一は、岐阜県出身で現在ブルックリンを拠点に活動するアーティストです。
上智大学を卒業後、ニューヨークにある私立美術大学院「NY Pratt Institute」のコミュニケーションズ・デザイン科に進学し、首席で卒業しました。
古今東西、具象と抽象など様々な要素を融合させた独自の作風が特徴で、情報が溢れる現代社会の様子が反映されています。
現在スタジオがあるアメリカだけでなく、ヨーロッパやアジア各国でも作品を多数発表しており、日本国内でも大型プロジェクトを実施しているためご存知の方も多いでしょう。
2021年にはNHK「日曜美術館」にて特集番組が放映され、彼の幅広い活躍や実力が高く評価されました。
2-8.空山基
空山基は、愛媛県出身で世界的に活躍する現代アーティストです。
近年は、アート界だけでなくファッション界でも多数のコラボレーションを手がけています。
2018年に東京で開催されたフランスのファッションブランドDiorのショーでは、空山基が描いた「セクシーロボット」や「ロボット恐竜」などがモチーフに選ばれました。
また、ランウェイの中心には、「セクシーロボット」の巨大彫刻が置かれ大変注目を集めています。
そのほか、マリリンモンローをモチーフにした作品やミュージシャンとのコラボレーションなども空山基を代表する作品です。
2-9.名和晃平
名和晃平は、大阪府高槻市に生まれ、幼少期より作品作りに勤しんでいたといいます。
その後、京都市立芸術大学に進み、在学中にイギリス留学を果たしました。
大学院でも学びを深めたあと、卒業後にはニューヨークやベルリンで制作を手がけています
帰国後の活躍も大変めざましく、固定概念を打ち砕くような作品を数々生み出す人気の現代アーティストです。
彼のベースとなる概念「PixCell(ピクセル)」は、彫刻の定義を大きく揺るがすものでした。
国内外で評価が高く、2022年秋にはパリに名和晃平の彫刻が設置され話題となっています。
2-10.井田幸昌
井田幸昌は、鳥取県生まれで彫刻家である井田勝己を父に持つ画家です。
父の影響もあり、幼少期からアートに囲まれて暮らしたといい、自身も絵を描くようになりました。
その後、東京藝術大学に何度も挑み、4度目でついに合格を果たします。
さらに大学院へと進み、在学中から個展やグループ展を頻繁に開いていました。
今では、「一期一会」をテーマにした独特の色彩センスが評価され、世界的な人気を誇っています。
2022年10月には渋谷のスクランブル交差点を彼の展覧会の広告がジャックしており、目にした方も多いでしょう。
2-11.磯村暖
磯村暖は、1992年東京生まれの若き現代アーティストです。
東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻で学んだのち、ゲンロン カオス*ラウンジ 新芸術校でも技術を習得し第2期生として卒業しました。
彼の表現方法は多岐にわたり、絵画や彫刻のみならず、映像やインスタレーションなども手がけています。
地獄や亡者などをモチーフにして作成することが多く、すぐに「悪」のレッテルを貼る傾向にある社会を批判する作品が特徴です。
2-12.大岩雄典
大岩雄典は、東京藝術大学大学院映像研究科博士後期課程で学びを深める現代アーティストです。
2017年にはCAF賞海外渡航費賞、2019年に第16回「美術手帖」芸術評論募集で佳作に入選するなど、着々とその実力を発揮しています。
主に、「時空間や言語が持つ美的=政治的な側面」をテーマにしたインスタレーション作品を手がけており、代表作として「無闇|Blind」が挙げられます。
また、インスタレーションの歴史や理論の研究者でもあり、執筆活動も手がける多彩な一面も彼の魅力です。
2-13.木村翔馬
木村翔馬は、デジタル・ネイティブ世代を代表する現代アーティストです。
キャンバスを使った従来の描き方と3DCGを融合した作風が特徴です。
2020年に京都市京セラ美術館で開催した個展では、VRゴーグルを活用した作品を発表しています。
1996年大阪府に生まれ、京都市立芸術大学大学院美術研究科修士課程絵画専攻修了しました。2017年の第4回CAF賞にて最優秀賞を受賞、また2018年には京都市立芸術大学作品展・有志展2017にて市長賞を獲得しています。
2-14.ナイル・ケティング
ナイル・ケティングは、映像やパフォーマンス、インスタレーションなど様々な表現方法を巧みに扱う若手アーティストです。
彼の作品は、「センシング(感覚・感知)」というテーマが表現されており、彼自身の五感に響く環境を生み出しています。
2021年に行われたタイランド・ビエンナーレでは、空港のラウンジでキャンセルされるフライトを、睡眠をとりながら待ち続ける人々を表現しました。
このように、オリジナリティの高い彼の作品は、国内外から評価されています。
2-15.富田正宣
富田正宣は、油彩による抽象絵画を主に手がける現代アーティストです。
熊本県生まれ、埼玉県在住で、2013年東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻を卒業しました。
近年は、油彩が持つ自由度の高さを生かした表現豊かな作品が評価されています。
本人にとって油彩は扱いづらい画材であり、その難しさが魅力とのこと。
海外での作品展も積極的に行っており、今後も活躍が期待されます。
2-16永田康祐
永田康祐は、愛知県出身の現代アーティストです。
2014年東京藝術大学大学院映像研究科修了し、写真や映像、デジタルメディアを用いた表現を発表しています。
私たちは、パソコンやモニターを見る際に無意識のうちに脳内で認識をしていますが、この処理法について改めて問う作品が彼の持ち味です。
例えば、画像編集ソフトによる過剰な処理をモチーフにした「ポストプロダクション」「ファンクションコンポジション」は、代表作となっています。
また「調理と接触」をテーマにした作品も人気です。
2-17.丹羽優太
丹羽優太は、1993年神奈川県の出身で、京都造形芸術大学大学院を首席で卒業、ジュネーブ造形芸術大学に留学した経験を持つ画家です。
日本美術における「見立て」「なぞらえ」「しつらえ」を継承した作品が特徴で、墨や和紙を画材に用いています。
近年は、「災害と人との関わり」をテーマにした作品も多く、山椒魚や鯰といった水生生物を取り上げながら、災害をユーモアに置き換えて乗り切る人間のたくましさを表現しています。
大学院の修了制作で発表した12枚の襖を使って描く「大鯰(なまず)列島図襖絵」は、京都造形芸術大学修了制作展大学院賞と「アートアワード丸の内2019」ゲスト審査員賞を獲得しました。
2-18潘逸舟
上海生まれ東京在住の潘逸舟は、2012年に東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻修了したアーティストです。
中国生まれ日本育ちという境遇を生かし、社会と個の関係において起こる疑問や戸惑いを表現しています。
自身が日常生活で用いるアイテムをモチーフにした映像作品やインスタレーションのほか、写真や絵画などを活用した多岐にわたる作風が特徴です。
日産アートアワード2020でグランプリを獲得しており、今後の活躍が大いに期待されます。
2-19布施琳太郎
布施琳太郎は、1994年東京生まれの現代アーティストです。
東京藝術大学大学院にて、映像研究科メディア映像を専攻し、映像や絵画をメインに様々なメディアを取り入れた作品を発表しています。
さらに、展覧会評や文芸評論といった執筆活動も盛んで、2019年に発表した評論「新しい孤独」は、第16回美術手帖芸術評論募集で佳作に入選しました。
アートの枠を超え、複数のメディアを用いて「現代のネットワーク社会における人間のつながり」に関する強いメッセージを投げかけています。
2-20マイケル・ホー
マイケル・ホーは、ハワイ生まれハワイ育ちの現代アーティストです。
カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)芸術学部にて学び、最優秀賞を取得して2018年に卒業。
その後、東京に移住してアート活動を続けています。
作品と鑑賞者の対話が生まれることを大切にしており、絵画や彫刻などを手がけています。
企業のロゴマークや顔文字といったインパクトの強いモチーフに、暗示的な言葉を組み合わせる作風が特徴です。
彼の作品はあえて残された「分かりにくさ」があることで、鑑賞者のイメージが刺激されます。
2-21森本啓太
森本啓太は、1990年大阪府生まれで2006年にカナダへ移住。
2021年に帰国する16年間をカナダ・トロントで過ごした現代アーティストです。
オンタリオ芸術大学で美術学士号を取得し、実力派のアーティストとして活躍しています。
作品はトロントの現代美術館「MOCA(Museum of Contemporary Art Toronto Canada)」やトロントのNicholas Metivier Galleryなど、カナダで多く展示されており、イギリスやアメリカなどの美術館でも所有されています。
クラシカルな技法を現代に持ち込むことで、移り変わる社会や町の歴史を表現している点が特徴です。
3.日本人現代アーティスト21選【女性編】
続いて、日本人の女性現代アーティストを21名紹介します。
3-1.草間彌生
言わずと知れた日本人現代アーティストの巨匠、草間彌生は1929年に長野県で生まれました。
幼い頃から幻聴や幻覚に悩まされ、この苦しい体験から草間彌生を代表する水玉や網目模様が生まれたといいます。
「水玉の女王」と呼ばれることもあり、「単一モチーフの強迫的な反復と増殖による自己消滅」を見出した作品が特徴です。
アートオークションでも非常に人気が高く、草間彌生の代表作である「かぼちゃ」は、1億円を超える価格で落札されています。
3-2.小松美羽
小松美羽は、「美しすぎる銅版画家」とも称される現代アーティストです。
2015年に、当時30歳という若さだったにも関わらず、大英美術館に彼女の作品「天地の守護獣」が永久所蔵されました。
この作品は、有田焼で作られた一対の狛犬で、有田焼の老舗窯元「弥左エ門窯」との共同制作です。
それまで、銅版画やアクリル画といった平面作品がメインでしたが、「天地の守護獣」をきっかけに立体作も発表しています。
3-3.ロッカクアヤコ
ロッカクアヤコは、1982年千葉県出身の現代アーティストです。
グラフィックアートの専門学校を卒業し、20歳ごろから独学絵を描き始めます。
2006年には、現代アーティストの巨匠・村上隆主催のイベント「GEISAI」にてスカウト賞を受賞するなど、着実に頭角を現し始めました。
印象的な目つきの少女をモチーフに、カラフルな色彩を施した絵が特徴です。
また、絵筆を使わず直接手でダンボールに描く手法もロッカクアヤコの代名詞といえるでしょう。
3-4.友沢こたお
友沢こたおは、1999年フランス・ボルドー生まれで5歳までパリで過ごしていました。
2004年に来日して以降、東京藝術大学院美術研究科油画専攻で学びながら、積極的に展示会を開いています。
スライム状の物質と有機物的なモチーフを合わせた独創的な人物画が特徴で、大きなインパクトを与える作品です。
実母はイラストレーターの友沢ミミヨであり、2019年には親子アートユニット「とろろ園」を結成しました。
3-5.石原海
石原海は、「愛」や「ジェンダー」をテーマにした作品を手掛ける現代アーティストです。
アートだけでなく映画製作も手掛けており、東京藝術大学の卒業制作として発表した映画「忘却の先駆者」は大きな注目を集め、その後2019年のロッテルダム国際映画祭にも正式出品されました。
また、映像をベースに用いたインスタレーションも人気で、現代アートでも高く評価されています。
3-6.皆藤齋
皆藤齋は、1993年生まれ北海道札幌市出身の現代アーティストです。
2019年に京都市立芸術大学大学院を修了し、現在は東京をベースに活躍しています。
9歳からコンピューターを使った作品を発表しており、独自の世界観を確立してきました。
彼女の作品には「アンチモラル」や「羞恥心を孕んだナルシシズム」といった、誰もの心の奥に潜む利己的な内面世界が表現されています。
それは、鑑賞者に対してたとえ常識や社会のレールから逸脱したとしても、心の奥に潜む世界自体が救いになり得ること、芸術そのものが同じような性質を持っていることを気づかせてくれるでしょう。
3-7.片山真理
片山真理は、国際的に注目を集める現代アーティストです。
2005年に出身地である「群馬青年ビエンナーレ」で奨励賞を獲得したことがきっかけで、アート界での動きが大きく変わったといいます。
2012年東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻を修了したのち、2019年にヴェネチア・ビエンナーレに参加、木村伊兵衛写真賞を受賞するなど、目覚まし活躍をしています。
先天性の四肢疾患にて9歳で両足を切断した彼女は、自分の生い立ちをアートに盛り込み、自らの体を表現した手縫いのオブジェや義足を用いたセルフポートレートなどが特徴です。
3-8.川内理香子
川内理香子は、1990年東京生まれで現在も東京を拠点に活躍する現代アーティストです。
多摩美術大学美術学部絵画学科油画専攻、同大学院を修了後、「身体」というテーマを根底においた作品を制作しています。
「食」や「セックス」など生々しい身体的行為に伴う肉体・心理的な相互関係のほか、他人とコミュニケーションを図る中で感じる自己などが主なモチーフです。
ドローイングに加えて、針金や樹脂、ネオン管など独特な素材を使った作風を手掛けています。
学生の頃より多数の賞を受賞しており、国内に限らず海外にも活躍の場を広げています。
3-9.熊谷亜莉沙
熊谷亜莉沙は、1991年大阪府に生まれ、2013年京都造形芸術大学洋画コース卒業したのちに同大学院総合造形領域を2015年に修了しています。
作品制作では、自身のバックグラウンドを反映させ、不穏なオーラをまとった写実的な絵画作品がメインです。
2022年に話題となった個展「私はお前に生まれたかった」では、「富裕と貧困」「生と死」「愛と憎しみ」といった人間の矛盾やその表裏一体性に焦点を当てた作品を発表しました。
また、作品にはテキストが添えられており、見るものの想像力を掻き立てる仕上がりとなっています。
3-10.近藤亜樹
近藤亜樹は、1987年北海道に生まれ山形を拠点に活躍するアーティストです。
2012年に東北芸術工科大学大学院実験芸術学科を修了し、在学中に経験した東日本大震災が彼女の作品に大きな影響を与えました。
「描くことは生きることそのもの」という彼女の作品からは、ダイナミックな「生」のエネルギーが感じられます。
絵画作品をメインに、映画製作やライブペイントなどジャンルを超えた制作でも高く評価されています。
3-11.西條茜
西條茜は、1989年兵庫県出身の陶芸家です。
陶芸と現代美術を融合させた作品で広く知られています。
その根底に流れるテーマは「虚構」。
陶磁器は、製法上中が空洞でなければない点に注目し、作品に虚構性を見出しています。
また、2020年からはサウンドアーティストのバロンタン・ガブリエと「TŌBOE」というユニットを組み、陶芸と音を組み合わせたパフォーマンスがスタートしました。
3-12.杉原玲那
杉原玲那は、1988年東京出身で現在も東京を拠点に活動しています。
幼少期より画集が好きだったという彼女は、小学生の頃から油絵教室に通っていました。
イギリスの高校に進学し、この頃現代美術に初めて触れたと言います。
その後、2013年に東京藝術大学美術学部先端芸術表現科を、2018年にはロイヤル・カレッジ・オブ・アーツイ ペインティング科を修了。
ベースとなるのは油絵ですが、その制作過程が特徴的です。
少し描いては放置して徐々に絵を完成させるほか、複数枚を同時進行することも。
描かれていく過程自体に関心を持ち、絵を熟成させるといっても良いでしょう。
そんな彼女は、2017年に美術家の大谷透とアーティスト集団「im labor」を結成しています。
3-13.スクリプカリウ落合安奈
スクリプカリウ落合安奈は、1992年埼玉生まれで、日本とルーマニアにルーツを持つ現代アーティストです。
2つの母国に根をおろす方法を模索している中で、「土地と人との結びつき」というテーマにたどり着きました。
国内外でフィールドワークを行い、土着の祭りや民間信仰、土地の哲学などを調査。
近年は、霊長類学の分野にも発展し、調査した情報をもとにインスタレーションや写真、映像、絵画といった様々な手法で作品を制作しています。
3-14.橋本晶子
橋本晶子は、1988年生まれで東京都を拠点に活動するアーティストです。
2015年武蔵野美術大学大学院造形研究科修士課程日本画コース修了し、同校の非常勤講師としても活躍しています。
繊細な鉛筆画をメインに構成されるインスタレーションを発表してきました。
描いた作品に加えて、展示空間の窓から差し込む光や影を活用した作品は、彼女曰く「風景をつくる」。
まさしく、空間内で変化していく様子は、風景そのものです。
2020年に開催された「第14回shiseido art egg」でグランプリを受賞し、今後の活躍がますます期待されます。
3-15.對木裕里
對木裕里は、1987年神奈川県出身で東京を拠点に活動する彫刻家です。
2011年京都市立芸術大学大学院美術研究科彫刻専攻修了。
もともとデザインに興味があったという彼女は、イサム・ノグチの幅広い仕事に感化され、彫刻の道を選びました。
メインとなる石膏に、木材や粘土、野菜や果物などの異素材を組み合わせて制作しています。
空間も取り込みながら、当たり前に存在するものの価値がひっくり返る瞬間を表現している点が大きな特徴です。
3-16.藤倉麻子
藤倉麻子は、1992年埼玉県出身の現代アーティストです。
2018年に東京藝術大学大学院メディア映像専攻を修了し、3DCGを用いた映像作品やAR技術を駆使した作品を手掛けています。
主なモチーフは、仮想都市における高速道路や街頭、工業製品などで、これらがまるで亡霊のように動き出す作品が特徴です。
2021年には、作品内に登場するオブジェクトを実際に立体化。
仮想と現実との関係性を問う作品で注目を集めました。
3-17.水野里奈
水野里奈は、1989年愛知県出身で、現在も同県を拠点に活動するアーティストです。
2014年多摩美術大学大学院美術研究科修士課程絵画専攻油画領域修了し、ボールペンと油彩を用いた作品を制作しています。
繊細な装飾とダイナミックな筆致といった、相反する要素を同一画面に盛り込み作品のインパクトを高めるのが特徴。
バリエーション豊かな技法を活用し、彼女独自の作風を構築してきました。
2014年にはアートアワードトーキョー丸の内三菱地所賞、2015年にはVOCA展奨励賞を受賞するなど、今後も活躍が期待されます。
3-18.迎英里子
迎英里子は、1990年に兵庫県で生まれ現在は秋田県を拠点に活躍する現代アーティストです。
2015年に都市立芸術大学大学院美術研究科彫刻専攻修了して以降、屠畜や石油の採掘、国債の仕組み、水蒸気の循環、婚姻制度など様々なシステムをモチーフとした作品を生み出してきました。
システムは目には見えづらい体系ですが、素材を通して「造形化」し、等身大の装置へ変換して動作させるパフォーマンスが特徴です。
2022年に開催された「国際芸術祭あいち2022」では、「approach 13.0」という作品を展示し話題を呼びました。
3-19.村上早
村上早は、群馬県高崎市にアトリエを構える銅版画家です。
2010年に武蔵野美術大学に入学し、大学院に在学中の2015年に開催された損保ジャパン日本興亜美術館「FACE2015」では優秀賞を受賞。
また、2019年には26歳という若さで個人名を冠にした個展を上田市立美術館で開催しています。
リフトグランド・エッチングという技法を用いて、心の傷が癒える過程を表現した作品が特徴です。
3-20.持田敦子
持田敦子は、1989年東京都生まれ長野県在住のインスタレーション作家です。
2018年バウハウス大学大学院および東京藝術大学大学院先端芸術表現専攻を修了し、既存の空間や建物に壁面や足場といった障害物、増設物を用いて「内と外」「上と下」といった相反するものを反転させる作品を手掛けています。
2018年には東京藝術大学サロン・ドプランタン賞やアートワードトーキョー丸の内今村有策賞を、2021年にはTERRADA ART AWARD片岡真実賞を受賞するなど、近年注目を集めるアーティストです。
3-21.百瀬文
百瀬文は、1988年に東京で生まれ、現在も東京を拠点に活動する現代アーティストです。
2013年に蔵野美術大学大学院造形研究科美術専攻油絵コース修了後、各地で多くの展覧会を開いています。
主な表現方法は映像とパフォーマンスで、大学の卒業制作では、ろう者との対話を題材にした「聞こえない木下さんに聞いたいくつかのこと」という映像作品を発表しました。
以降、この作品は各所で繰り返し上映され話題を呼んでいます。
フィクションと現実を融合させて作られる彼女の作品は、非常に強いメッセージ性があり、複雑な問題を複雑なままに取り上げる果敢な挑戦が今後も期待されます。
4.日本人現代アーティストの中でも若手に投資を考えるべき理由
日本のアート市場は世界と比べてはるかに小規模です。
アート市場が小さいと、作品の価値が上がりにくくなり、実際規模の大きなアメリカやイギリス出身のアーティストの作品は日本の2~3倍程度で売られています。
また、従来はアーティストとギャラリーの関係が強く、一度取引を始めると関係を続けざるを得ないというケースも少なくありません。
こうした状況が、日本のアート市場の規模を小さくしているといっても良いでしょう。
しかし、才能豊かなアーティストはどんどん外へ発信するべきで、より適した販売先が見つかると売り上げも伸びる可能性があります。
近年は、以前よりも日本のアート界が活発になりつつあり、今後の動向に注目が集まっているのも事実です。
つまり、日本人のアーティストの作品は底値といっても過言ではなく、今後伸びる可能性があるため買い時だとも言われています。
5.日本人の現代アートを購入するなら「Artis」がおすすめ
今回は、日本人の現代アーティストを男女それぞれ21名ずつ紹介しました。
現代アートといえば海外のアーティストを思い浮かべがちですが、日本人の活躍はめざましく、今後が期待される若手アーティストもジャンル問わず多くみられます。
今回ご紹介したアーティストの作風やメッセージに惹かれ、現代アートに興味を持った方は、Artisの利用がおすすめです。