現代アーティストとして世界的にも有名で、大衆文化と密接な距離感で様々なコラボレーションにより度々ニュースなどでも目にする村上隆のNFTについて解説します。
すでに現代アートの分野で大成していると言える村上隆ですが、NFT作品への挑戦では紆余曲折がありました。
しかし仮想通貨等が絡むため多少の難壁はあるものの、現在では明確な結果を残しているのです。
本記事ではその奇跡や具体的なNFT作品の内容、そして気になる価格まで解説していきます。
NFTとは一体なんなのだろうという疑問も、本記事を読んでいただければその概要が見えてくると思いますのでぜひご覧ください。
1.村上隆のNFT作品について
村上隆とNFTについて早速、解説していきます。
要点はこちらの3つ。
- 1回目は村上隆の知識不足で出品取り下げ!?
- 2回目のNFTで2万体の3Dキャラクターを発表
- 村上隆の初のNFT展覧会がニューヨークで開催
次項で各詳細をご紹介しますので、ぜひご参考ください。
1-1.1回目は村上隆の知識不足で出品取り下げ!?
現代アーティストとして様々な分野で活躍する村上隆ですが、実はNFT出品において1回目の挑戦をした際は一度出品の取り下げを行っています。
1回目のNFT作品出品の際、NFTプラットフォームとして代表的な「OpenSea」に村上隆の代表的なお花をモチーフにした作品を毎日12個ずつリリースし、一度はオークションで3000万円程まで値段がつきました。
しかしその段階で村上隆は出品を取り下げたのです。
取り下げた理由として本人のインスタグラムの内容を簡単に要約すると、
- NFTで使用されているブロックチェーンの規格をより吟味する必要があった
- NFT作品の売買をする上での契約を独自なものにすべきかもしれなかった
- 独自のNFT販売プラットフォームを用意する必要があったかもしれない
- IPFSというNFTプラットフォームが消えてしまっても作品データが担保されるシステムを利用すべきだったかもしれない
という主に4つの不安点が初のNFT作品出品後にリサーチした結果浮き上がり取り下げという流れに至ったようです。
1-2.2回目のNFTで2万体の3Dキャラクターを発表
1回目のNFT作品出品の際は取り下げという結果になった村上隆ですが、NFT自体にはその後も強い興味を示しており、2回目の出品の際にはデジタルスニーカーやバーチャルウェアを販売しているRTFKTスタジオの2万体の3Dキャラクターを出品した「アバター・プロジェクト」に2021年10月コラボレーションで参加しました。
村上隆はキャラクターの目や口、ヘルメット、服などのデザインを担当し、「僕たちはとてもユニークなキャラクターを作るために懸命に作業しているのです。このコラボレーションを皆さんに楽しんでいただき、NFTの新たな魅力を発見していただければ幸いです」とコメントを残しています。
1-3.村上隆の初のNFT展覧会がニューヨークで開催
そんなNFTに関連した制作を活動的に行い始めた村上隆ですが、村上隆初となるNFT展覧会『歴史を射抜く矢(An Arrow through History)』を2022年6月にニューヨークのガゴシアン・ギャラリーで開催しました。
この村上隆初のNFT展は、現代美術業界で最も影響力をもつギャラリーの一つであるガゴシアンで初のVR展ともなり、現代美術全体にとっても意義深い展覧会になりました。
出展作品としては、RTFKTスタジオとのコラボレーションしたキャラクターや、一度目のNFT作品制作の際に取り下げた村上隆の代表作であるフラワーがモチーフになっている作品《Murakami,Flowers》に関連したものなどがあったのです。
展示方法にも様々な工夫が施されており、スナップチャットのアプリをアバターの作品にかざすと瞳がキョロキョロと動き出したり、メタバース上のキャラクターが等身大で現れたりと、NFTに関連して現実と仮想空間上をインタラクティブに利用する展示がなされました。
フラワーの展示会場ではそのモチーフに関連してスナップチャットをかざしながら歩くと、足元から草がニョキニョキと飛び出し、フラワーが目の前で飛び回るといったようなARの利用がされ、来場者の足がとまらない構成が採られています。
また、中国の青磁からインスパイアされた魚をモチーフにした作品《Chinese Perch After Kitaoji Rosanjin》が展示された会場ではARで魚が会場を泳ぎ回り頭上から光の筋が降り注ぐことで、まるで鑑賞者が川の中にいるような演出されているのです。
2.村上隆のNFT作品の値段
そんな近年NFTに積極的な姿勢を見せ、高額での作品売買が度々話題になる村上隆ですが、彼のNFT作品がいったいいくらほどで購入できるのか気になる人も多いと思います。
NFTの性質的にも値段は様々で上下変動も激しいのですが、大体のイメージとしては数百万〜数千万円といった価格帯です。
実際にOpenSeaで取引されている作品を見てみると、
最近高値で取引されたものでも289〜450ETHなので、日本円で約5500〜8600万円という取引がされています。
現代アートに高額なイメージを抱いている方も多いと思いますが、正直驚きの値段です。
ですがこのアバターのシリーズは多数出品されているので最近売れた順で見てみると7ETH程なので、約130万円前後です。
決して安い金額ではありませんが、過去の村上隆の現代アート作品を考えると比較的安価で村上隆の作品を所持できる機会がNFTによってもたらされていると考えることもできるかもしれません。
また村上隆の代表的なフラワーに関連した#0000と名付けられたこの作品は、村上隆のNFTへの挑戦として初期の作品ですが、2021年3月31日時点で144ETH、約2860万円の価格がついたのです。
しかし村上隆NFT作品の最新ニュースとして、このMurakami FlowersのNFT作品が2022年の仮想通貨大暴落の影響を受けて約3500万円から約27万円へ急落したことが話題となりました。
これに関して村上隆は、NFTのプロジェクト立ち上げのタイミングが悪かったとNFT作品所有者に向けて謝罪をしました。
3.村上隆について
村上隆は1962年生まれの日本を代表する現代アーティストです。
有限会社カイカイキキの代表取締役、元カリフォルニア大学ロサンゼルス校客員教授でもあり、東京藝術大学美術学部日本画科を卒業後、同大学大学院美術研究科の修士、博士を修了しています。
日本画の浮世絵や琳派、オタクの文脈、アニメやフィギュアなどのサブカルチャー文化などを題材にした作品が多く、日本の消費文化からくる空虚感、ファインアートと大衆文化の無差別感、階層のフラット感、アニメーションにおける立体感のないフラットさなどを複合して「スーパーフラット」という概念を提唱しています。
自身がアーティストでありながらも会社を経営しているように、実際に身を持って大衆文化と美術についてを日々研究し制作しているのです。
若手アーティストへの支援も積極的に行っており、カイカイキキで美大生を雇用したり、「カオスラウンジ」という美術集団の作品を購入したりなど様々な方法で支援しています。
こちらの記事でもっと詳しく解説していますので、ぜひ合わせてご確認ください。
3-1.2022年ウェビー賞を受賞
インターネット上で活躍する優れたイノベーターやクリエーターを称えるために1996年に創立されたネットのアカデミー賞的な存在であるウェビー賞ですが、2022年村上隆はNFTプロジェクトによるインターネットへの貢献が評価されウェビー特別功労賞を贈られました。
同時にNFTの生みの親であるアニル・ダッシュとケビン・マッコイはウェビー生涯功労賞を授賞したのですが、彼らがNFTの基礎となる技術を初めて発表したのは2014年です。
村上隆が評価されたのは既に紹介したRTFKTとのコラボ「クローンX」と「Murakami.Flowers」のふたつのNFTプロジェクトで、ウェビー賞からは「村上氏はインターネットによってアートを一般市民のものにできると信じています。
「彼は今、NFTアートとメタバースを通じて、その信念を実証しているのです」と声明を述べられており、NFTにおいても彼のテーマを着実に実行して他者からの大きな評価を得られていることの証明になっていると言えるでしょう。
4.まとめ
本記事では村上隆のNFTについてまとめさせていただきました。
ただでさえなかなかとっつきにくい現代アートに加え、仮想通貨やブロックチェーンなどが絡みさらに難しく感じてしまう方もいるかもしれませんが、最近はメタバースやNFTゲームの影響で少しずつNFT作品が身近なものになりつつあるのです。
考え方を変えれば、美術作品をより楽しむことのできる要素がNFTによってもたらされ、より多様な分野の人々にひらかれたともとることができると思います。
また村上隆のNFT作品に限った話ではありませんが、資本的な人類史において仮想通貨の登場が非常に大きな変革であることは自明で、NFTアートは今まで仮想上の取引でしかなかった仮想通貨に初めて「モノ」が結びつけられた大きな発明です。
たしかに今後のNFTがどのような境遇に対面するかどうかという点で全くリスクがないとは言えませんが、今目の前で起きているNFTアートの現象が歴史的な変化であることは間違いがなく、リスクに見合うだけの経験をすることができるのではないでしょうか。