シュルレアリスムの作品を多数残したマックス・エルンストとはどのような画家だったのでしょうか?
今回は、マックス・エルンストの生涯や作風を解説します。
また、代表作品や作品を鑑賞できる場所にも触れるので、マックス・エルンストについて詳しく知りたい方はぜひ参考にしてみてください。
1.マックス・エルンストとは
マックス・エルンストは、1891年にドイツで生まれました。
父親は聴覚に障害を持ちながら教師として働き、さらにはアマチュアの画家として活動していたことから、エルンスト自身も幼少期から絵画に関する知識を得ます。
1909年、18才になったエルンストはボン大学に入学し、精神医学や哲学、心理学などを学び始めました。
その中で、精神病を患う患者の描いた絵に感銘を受け、エルンスト自身の芸術に対する関心がさらに大きくなりボン大学を中退します。
その後、第一次世界大戦の勃発に伴い徴兵されますが、この戦争経験がエルンストの作風に大きな影響を与えました。
戦争が終わると、生涯の友であるジャン・アルプらとともに、既成概念を否定する芸術運動「ダダ運動」に参加します。
同時期には、エルンストの作風のひとつである「コラージュ」の制作を始めました。
1922年ごろには、シュルレアリスムへ転換し、無意識や夢からの連想に重点をおきます。
第二次世界大戦が勃発したことをきっかけにアメリカに亡命しますが、1953年にはフランスに渡り、南フランス・セイヤンを終の棲家としました。
多くの作品を残したエルンストは、1976年に84才でその生涯を終えています。
2.マックス・エルンストの代表作品
マックス・エルンストは、コラージュや版画、彫刻などさまざまな作品を制作しています。
続いては、主な代表作品を3つ紹介します。
2-1.百頭女
マックス・エルンストが初めて制作したコラージュ・シュルレアリスム小説です。
コラージュとは、既成の印刷物から切り取った部分を別の印刷物と組み合わせた作品で、エルンストの代表的な作風でもあります。
「百頭女」は19世紀に制作された挿絵本やカタログの木版画を活用したコラージュで、エルンスト自身が記した不思議なキャプションによって一つの物語に仕上げられている点が特徴です。
しかし、明確なストーリーがあるわけではなく、シュルレアリスムならではの不可解な流れで進んでいく物語であり、見るものの心を揺さぶります。
2-2.沈黙の目
1943年から1944年に油彩で描かれた絵画が、第二次世界大戦の混乱時の様子を心象風景として表現した「沈黙の目」です。
この作品には、マックス・エルンスト自身が追求し続けた「デカルコマニー」という技法が使われています。
デカルコマニーとは、フランス語で「転写」という意味があり、ガラスや紙に垂らした絵の具を別の紙に押し付けて現れる模様です。
エルンストは、偶然的にできた模様を岩盤や動物、植物などに見立てました。
異世界を想像させる表現は、多くのSF作家にインスピレーションを与え、1958年にはSF小説「A Case of Conscience」の表紙に作品の一部が使われています。
2-3.カプリコン
マックス・エルンストは、彫刻作品の制作も手がけています。
山羊座を意味する「カプリコン」は、1948年から1975年にかけて作られたエルンストンの彫刻作品における集大成です。
エルンストはカプリコンを家族の象徴と考えていました。
同作品では、王と女王を表現しており、王は山羊の角を持っています。
その膝には、小さな生き物が乗っていますが、これはエルンストが飼っていた犬だといわれています。
3.マックス・エルンストの作品を鑑賞できる場所
マックス・エルンストの作品は、日本各地でも鑑賞できます。
その中から3箇所をご紹介します。
3-1.豊田市美術館
豊田市美術館は、愛知県豊田市にある公立の施設です。
シュルレアリスムの作品に重点を置いており、マックス・エルンストだけでなくルネ・マグリットやサルバドール・ダリなどの作品も展示されています。
マックス・エルンストの作品は「王妃とチェスをする王」と「子供、馬そして蛇」の2つが収蔵されています。
3-2.国立西洋美術館
国立西洋美術館は、上野公園内に位置する西洋美術を専門に展示する施設です。
ルネッサンスから20世紀半ばまでの作品を中心に所蔵しており、ピカソやルノワールといった著名な作家の名作も多数展示されています。
マックス・エルンストの油彩作品「石化した森」もそのひとつです。
4.まとめ
今回は、独自の作風を生み出した画家マックス・エルンストについて解説しました。
油彩や彫刻のほか、エルンストを象徴するコラージュ作品も人気が高く、中でも「百頭女」は独特の世界観を体感できる作品です。
日本でもエルンストの作品を堪能できる場所があるので、ぜひ一度不思議な世界を感じてみてはいかがでしょうか。
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