スペインを代表する20世紀現代美美術の巨匠「アントニ・タピエス」をご存知でしょうか。
独自の表現方法を用いて、人類に巻き起こる問題や紛争に対する懸念を示し続けたアーティストとしても知られています。
今回は、アントニ・タピエスの概要や代表作品、鑑賞できる場所を紹介します。
1.アントニ・タピエスとは
アントニ・タピエスは1923年にスペイン・バルセロナで生まれました。
10才ごろに見た近現代のアートが載っていた雑誌に惹かれ、自身も独学で絵画を始めます。
ゴッホに影響を受けていた1945年頃は油彩をメインに描いていましたが、次第にシュルレアリスムに移行しました。
また、哲学や文学、東洋思想にも興味を持ち、こうした幅広い分野からインスピレーションを受けながら制作に打ち込んでいたようです。
1950年に初めて個展を開催したのをきっかけに、フランス政府から奨学金を受けて芸術の都パリへと移住しました。
パリで制作を始めたアントニ・タピエスの作風は、抽象表現主義を強く表したものになり、彼の代名詞でもあるミクストメディアを取り入れた作品が増えていきます。
ミクストメディアとは、複数の異なる素材を組み合わせた表現方法です。
その後、ポップアートの影響を受け、絵画だけでなく立体表現も手がけていきます。
人類が起こす問題や紛争に懸念を示していたアントニ・タピエスにとって、立体制作はよりリアルに意思を表しやすい表現といえるでしょう。
こうして、独自の表現を確立したこともあり、バルセロナ市民賞やアストゥリアス皇太子賞受賞を受賞するなど、さらに活躍の場を広げました。
さらに、日本でも高松宮殿下記念世界文化賞を受賞しており、国内外で評価されているアーティストといえます。
2012年に88才でこの世を去りましたが、現在でも注目されている現代美術家のひとりです。
2.アントニ・タピエスの代表作品
アントニ・タピエスは、絵画と立体作品それぞれに多くの作品を残しています。
その中から2つを紹介します。
2-1.ズーム
1946年に油彩で描かれた作品です。
65cm×54cmの板が用いられており、ゴッホの影響を受けていた時代の作風が見られます。
この作品で目立つポイントが左右の手形です。
これは、シュルレアリスムにおける呪術的な象徴として取り入れられています。
また、天を仰ぐように描かれているのは、キリスト教で祈りの意味を表す「オランス」です。
当時のアントニ・タピエスにとって重要なモチーフでした。
現在「ズーム」は、アントニ・タピエス美術館が所蔵しています。
2-2.靴下
アントニ・タピエスが晩年に制作した立体作品のひとつが「靴下」です。
1991年にカタルーニャ美術館から依頼を受けて制作された作品ですが、中世や古典芸術をメインに展示していた同美術館にそぐわないということで、倉庫に収納されたままでした。
しかし、2010年にアントニ・タピエス美術館が改装されたのをきっかけに、陽の目をみることになりました。
アントニ・タピエスは、こうした古い布を使った立体作品を多く制作しています。
こちらの作品は現在アントニ・タピエス美術館の屋上に展示されています。
3.アントニ・タピエスの作品が鑑賞できる場所
アントニ・タピエスの作品は、国内外で鑑賞できます。
そのうち3つの施設を紹介します。
3-1.アントニ・タピエス美術館
名称の通り、アントニ・タピエスの作品が展示されている美術館です。
彼が生まれたスペイン・バルセロナに位置し、館内はもちろん屋上や屋外にもアントニ・タピエスの立体造形物が展示されています。
地元を代表するアーティストということもあり、学生たちの課外活動の場としても活用されているようです。
3-2.富山県美術館
日本でもアントニ・タピエスの作品を見ることができます。
そのひとつが富山県にある「富山県美術館」です。
頻繁にコレクション展を開催しているので、気軽にアントニ・タピエスの作品を鑑賞できる場所といえるでしょう。
3-3.愛知県美術館
愛知県美術館にもアントニ・タピエスの作品が収蔵されています。
彼の作風である異素材を使ったアートは、小学生がアートを学ぶきっかけにもなっており、課題活動の題材として取り上げられることもあるようです。
4.まとめ
今回は、スペインが生んだ20世紀現代美術の巨匠アントニ・タピエスについて解説しました。
独自の作風に込められた思想や哲学は、彼が亡くなった今でも多くの人に響いています。
日本でも鑑賞できる場所があるので、一度彼の作品を体感してみてはいかがでしょうか。
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