独自の「ひっかき技法」で生涯にわたり多くの作品を描いた浅野弥衛をご存知でしょうか。
今回は、浅野弥衛の人生や作風を解説するとともに、代表作や作品が見られる場所を紹介します。
1.浅野弥衛とは
浅野弥衛は、1914年に三重県鈴鹿市で生まれた画家です。
第一次世界大戦真っ只中であり、中学卒業後は職業軍人として1年間を満州で過ごしました。
帰国後、絵筆を持つようになり、早くも独自の絵画スタイルを目指していたといいます。
本格的に絵画を描くようになったのは1950年代に入ってからでした。
同じ頃、美術文化協会に入会し、1956年には常任委員になっています。
昼間は銀行に勤務しながら夜間に制作活動を行う日々でしたが、45才の時に退職し、ますます、画家として制作を続ける日々に没頭していきました。
1-1.名古屋が発表の拠点
生涯三重県で過ごした浅野弥衛ですが、名古屋を芸術の拠点としていました。
こうした背景もあり、985年には名古屋市芸術賞特賞を受賞しています。
続いて、1991年には三重県民功労賞受賞を受賞するなど、芸術家として高く評価されました。
1996年に81才でその生涯を閉じますが、その後も作品はさまざまな美術館で展示され続けています。
1-2.ひっかき技法
浅野弥衛は「線の画家」と呼ばれています。
その理由として挙げられるのが、彼の作風である「ひっかき技法」です。
画面を釘などで引っ掻いて描く技法で、抽象的なモノクローム作品を多く描いています。
ひっかき技法を取り入れるようになったのは、美術文化協会を退会してからです。
それ以降、一貫してひっかき技法を取り入れるようになり、中でも、乳白色の画面を無数の線を引っ掻いて描いた作品は、晩年になってから高く評価されました。
1-3.没後も展示され続ける作品
浅野弥衛の作品は、没後も展示され続けています。
例えば、1998年には東京国立近代美術館にて「20世紀の“線描”―〈生成〉と〈差異〉展」が開催されました。
生誕100年を迎えた2014年には、浅野弥衛が過ごした三重県鈴鹿市にて「浅野弥衛生誕100周年記念展 ~浅野弥衛の世界~」が開かれるなど、今も尚注目され続けている画家です。
2.浅野弥衛の代表作と買取相場
浅野弥衛の代表作のうち3点を解説します。
2-1.Lot611《無題》
2020年7月4日に開催されたシンワオークションにて42万円で落札された作品が、「Lot611《無題》」です。
56.0×56.0㎝角の紙を使い、多色のクレヨンで線を描いた「線の画家」だからこそ表現できる作品といえます。
基本的に、浅野弥衛の作品は比較的小さいサイズのものが多く、買取価格も大幅に上がることはないとされています。
しかし、安定した人気があるため、数十万円が相場といえるでしょう。
2-2.桐の木の見える窓/2.Work 11

出典:クリスティーズオークション
https://www.christies.com/lot/lot-6118392
2020年のクリスティーズオークションにて、1,750万円の高額で取引された作品が「桐の木の見える窓/2.Work 11」です。
この価格から、日本より海外市場で高く評価されていることがわかります。
実は、同作品は2019年のSBIオークションにて5万円で落札されました。
しかし、翌年クリスティーズオークションに出品され、一気に相場が跳ね上がっていることから、今後ますます注目される作品といえるでしょう。
2-3.彫刻のある室内

出典:豊田市美術館
https://www.museum.toyota.aichi.jp/exhibition/2017/special/ASANO_Yae/
豊田市美術館で展示されている作品のひとつが「彫刻のある室内」です。
こちらの作品は、乳白色だけでなく複数の色を使い表現されています。
線に加えて点や四角など幾何学模様を組み合わせており、一見すると硬い印象に感じる作品ですが、手で描かれる絵画ならではといえる暖かみが感じられるでしょう。
3.浅野弥衛の作品が見られる場所
浅野弥衛の作品は、さまざまな美術館の企画展などで展示されています。
しかし、常設されている美術館は限られており、主な美術館は以下の3つです。
3-1.三重県立美術館
浅野弥衛が生涯を過ごした三重県にある「三重県立美術館」では、浅野弥衛の作品を多数所蔵しています。
また、同美術館が刊行する冊子において、浅野弥衛のエピソードをまとめた記事が掲載されており、県民に愛されている画家であることがわかるでしょう。
三重県立美術館は、最寄りのJR津駅から徒歩10分圏内とアクセスがよく、遠方からも訪れやすい場所です。
浅野弥衛のゆかりの地と合わせて、彼の作品を楽しんでみてはいかがでしょうか。
3-2.豊田市美術館
愛知県豊田市に位置する「豊田市美術館」も、浅野弥衛の作品を所蔵する施設のひとつです。
愛知県は浅野弥衛が創作活動の拠点としていた場所でもあり、三重県と同じく浅野弥衛を慕う人が多いエリアでもあります。
作品数は15点と三重県立美術館と比べて少ないものの、浅野弥衛の作風を存分に感じられる作品が揃っているため見所の多い施設といえるでしょう。
3-3.刈谷市美術館
「刈谷市美術館」にも浅野弥衛の作品が7点所蔵されています。
豊田市美術館と同じく、浅野弥衛が活躍した愛知県にある施設です。
敷地内にある茶室では、抹茶と和菓子のおもてなしが受けられるので、アートを楽しみながらのんびりと時間を過ごすことができます。
4.まとめ
今回は、三重県出身の画家「浅野弥衛」を紹介しました。
生涯を生まれ育った三重県で過ごし、名古屋を発表の拠点としていたことから、三重県や愛知県の美術館で彼の作品が多く所蔵されています。
晩年は、浅野弥衛の作風である「ひっかき技法」が評価され、死後27年が経過した現代においても、徐々に高値で取引されるようになっています。
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