ピカソの名作「泣く女」とは?絵の意味や背景を解説 | Artis

ピカソの名作「泣く女」とは?絵の意味や背景を解説

ピカソの名作「泣く女」とは?絵の意味や背景を解説
出典:テート・ギャラリー https://www.tate.org.uk/art/artworks/picasso-weeping-woman-t05010

20世紀最大の芸術家といわれるパブロ・ピカソの代表作のひとつが「泣く女」です。

感情的に激しく泣く女性が個性的な画風で描かれています。

今回は、ピカソの名作「泣く女」について、絵の意味や描かれた背景をみていきましょう。

1.ピカソとは

ピカソは、1881年にスペインで生まれ、フランスを拠点に絵画、彫刻、陶芸、版画など幅広いジャンルで活躍した芸術家です。

冒頭でも触れたように20世紀を代表する芸術家であり、多くの人に影響を与えました。

一般的な絵画は、一つの視点から一つの対象物を描きますが、ピカソは複数の視点から同時に対象を鑑賞して、そこから得られるイメージを一枚の絵に表現する革新的な技法を編み出しています。

いわゆる「キュビズム」と呼ばれる美術表現であり、ピカソはキュビズム運動のパイオニアとしても広く知られていました。

キュビズム運動以降、ピカソはローマを訪れ、ルネサンスやバロック様式の建築・都市、遺跡などを初めて目にします。

これらの表現に影響を受けたことから、キュビズムと並行して写実的な表現を好むようになりました。

また、フランスでは現実世界にとらわれずに表現する「シュールレアリスム」という芸術論が流行します。

ピカソも、シュールレアリスムの作品展に参加するなど、キュビズムのみに捉われることなく、独自の作風を生み出していきました。

1973年、ピカソは92歳という大往生でこの世を去ります。

ピカソが亡くなってから50年が経ちますが、現代においても尚、多くの人の心を掴む芸術家です。

2.ピカソの名作「泣く女」について

ピカソの名作「泣く女」について

出典:テート・ギャラリー
https://www.tate.org.uk/art/artworks/picasso-weeping-woman-t05010

ピカソは「ゲルニカ」や「アビニヨンの娘たち」など、数多くの名作を残しています。中でもピカソの代名詞であるキュビズムが色濃く表現された作品とされている絵画が「泣く女」です。

2-1.「泣く女」をテーマにした作品は100点以上

実は、私たちがよく知る「泣く女」の他にも、同じく「泣く女」をモチーフにした作品は100点以上に登るといわれています。

代表作とされる「泣く女」は油彩で描かれていますが、他の作品はクレヨンで描いたものや、鉛筆のみで描かれたデッサンなどもあります。

例えば、国立ソフィア王妃芸術センターが所蔵しているクレヨン画の「泣く女」は、柔らかな曲線が用いられている点が特徴です。

一方、テート・ギャラリー像の名作「泣く女」は、しっかりとした直線が印象的であり、女性の燃えるような感情が強く表現されています。

2-2.モデルは愛人ドラ・マール

ピカソの「泣く女」のモデルとなったのは、ピカソの愛人である写真家ドラ・マールです。

彼女は、非常に感情的な性格で、すぐに泣いていたといいます。

ピカソは、複数の女性を愛しており、ドラ・マールが愛人だった頃もフランソワーズ・ジローという若い女性とも交際していました。

ドラ・マールとフランソワ・ジローは、ピカソのアトリエで再三にわたって大げんかをし、その度に感情的に泣くドラ・マールは「泣く女」に表現される女性そのものでした。

2-3.「ゲルニカ」の後継作

「ゲルニカ」の後継作

出典:ソフィア王妃芸術センター
https://www.museoreinasofia.es/coleccion/obra/guernica

「泣く女」のモチーフは、ピカソの大作「ゲルニカ」にも登場しています。

「ゲルニカ」は、ドイツ軍による空爆が表現されており、被害に嘆き苦しむ人物が複数描かれた作品です。

その中に、亡くなった子供を抱えて嗚咽する女性が描かれています。

この子供は、ピカソと当時の愛人であったマリー・テレーズの間に生まれた子供といわれており、その横に描かれた牛にピカソ自身を投影しているそうです。

100点以上に上る「泣く女」は、この「ゲルニカ」と同時期に描かれました。

数カ月にわたって「泣く女」をモチーフにした作品を追求し続け、ゲルニカを描き終えた4ヶ月後に誰もが知るところの「泣く女」を追求の結果として完成させています。

こうした社会状況も踏まえて鑑賞すると、激動の時代に翻弄される人々、そしてピカソ自身の葛藤や苦悩も見えてくるでしょう。

3.「泣く女」を鑑賞できる場所

ピカソの「泣く女」は、現在イギリスのロンドンに位置する「テート・ギャラリー」に所蔵されています。

「テート」とは、イギリス政府が所有するイギリス美術コレクションや近代美術コレクションの管理を任された組織です。

リヴァプールで砂糖精製業を営んでいた実業家ヘンリー・テート卿が、自身が集めた美術品をイギリスに寄贈したことが「テート・ギャラリー」の始まりとされています。

現在は、イギリスの美術品を所蔵する「テート・ブリテン」、20世紀を代表するモダンアートをはじめとする新進気鋭のアート作品がテーマ別い展示された「テート・モダン」など4つのサイトから構築されており、様々な視点でアートを楽しめる施設です。

ピカソの「泣く女」は、4つのサイトのうち「テート・モダン」が管理しています。

4.まとめ

今回は、ピカソの名作「泣く女」について開設しました。

キュビズムの精神が取り込まれた作品であり、一般的な絵画とは描かれ方が一風変わっているため不思議な感覚に陥りますが、キュビズムの意味や「泣く女」が描かれた背景を知った上で鑑賞すると、ピカソの意図が伝わるでしょう。

 

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