現代アートって難しいですよね。「何かコレ好きだけど、どこに注目すべきなの?」と思う方も多いでしょう。鑑賞者が作品に対して「疑問を持つ」ことによって完成するものなので評価に正解はありませんが、、、
まったく見向きもされない作品に対して数十億で取引される作品もあり評価がわかれているのも事実です。そこで私が今注目している日本人現代アーティストを3人ご紹介します!
- 名和晃平
- 杉戸洋
- 塩田千春
当記事では、注目されているアーティストの特徴や代表作品を解説しています。ぜひご参考ください。
名和晃平(なわ こうへい)
生年月日 |
1975年〜 |
出身 |
大阪府 |
ジャンル |
彫刻 |
名和晃平は京都を拠点に活動する彫刻家で、アートプラットフォーム「SANDWICH」の主宰です。
ルーブル美術館のピラミッドに作品が展示されるほどの実力から、日本現代アーティストの次世代のエースとして評価されています。Pixel(画素)・Cell(細胞・器・粒)が融合した情報化時代を象徴する「PixCell」シリーズが代表作です。
人は「見る」や「触れる」といった視覚による触感を通してモノを感知し認識しています。感覚に接続する境界面として「表皮」に着目し「セル(細胞・器・粒)」で世界を認識するという概念を軸にしています。素材の表皮をセルで覆うことでモチーフの表面は球体を通してでしか見えなくなるのです。
私たちもスマホで色んなモノを見て知ることができますが、実物そのものに触れられない情報化社会との共通点があります。多様な技法や発砲ポリウレタンやガラスビーズなど多くの素材の特性と3Dスキャンなどの最先端のテクノロジーを融合させた彫刻制作・空間表現を行っています。
主な個展は2011年東京現代美術館で開かれた「名和晃平 – シンセシス」、2013年鹿児島県霧島アートの森で開かれた「名和晃平 – SCULPTURE GARDEN」などです。第14回アジアン・アート・ビエンナーレ・バングラデシュ2010最優秀賞を受賞しています。
代表作:PixCell-Deer#52
制作年 2018年
名和晃平の代表作「PixCell」シリーズの「Deer#52」。インターネットを通して集めた楽器や剥製などの物体の表面をガラスビーズで覆った彫刻作品です。
剥製などのモノも透明のセル(球体)で覆うことにより異なるモノでも同一の質感へと変化させ、球体(セル)のレンズ効果によって、作品の表面は歪んで拡大されます。セルによって分かれた画像は見ている人の視点の移動に合わせて映像のように変わっていくのです。
視覚的にリアルである現物が映像としてでしか認識できなくなる不思議な感覚を味わえる作品です。
杉戸洋(すぎと ひろし)
生年月日 |
1970年〜 |
出身 |
愛知県 |
ジャンル |
ネオポップ |
杉戸洋は愛知を拠点に活動している現代アーティストで、心の中や夢に浮かぶイメージを作品に淡い色調で落とし込んでいます。木や家、舟など親近感のある題材と幾何学的な形など抽象と具象が柔らかく交差するような作品が特徴的です。
「森の中に歩いてゆくように、私は筆を動かし始め、すべてから離れ そして、言葉と意味が力を失い ただ消え去ってほしいとおもうのです」と杉戸洋は語っており、彼の作品の抽象的なカタチや半抽象的な動物や人物、点、線は風通しの良い柔らかな光に包まれ、不思議な奥行きがあるのが特徴です。
杉戸洋は父親の仕事の関係で4歳から14歳までニューヨークで過ごし、ニューヨーク近代美術館やメトロポリタン美術館、MoMAに足を運んでいました。ニューヨーク美術館では『ゲルニカ』に感銘を受け、最初に購入した画集はピカソでした。生活では英語を使っていたため、日本語でうまく表現できず知覚表現の手段で絵を選ぶようになりました。
奈良美智とは16歳の時に通っていた予備校での先生と生徒の関係で、現在でも親交があり二人展やコラボレーションなどを行っています。2017年の東京美術館での初の個展『とんぼ と のりしろ』では幅15mの大型作品『module』を発表するなど国内に留まらず海外でも注目を集めている日本現代アーティストです。
代表作:into the orange tree
制作年 2012年
『into the orange tree』は2012年に発表された作品です。
左側には緑や青、紫などの寒色が正方形で区切られ、右側には赤い屋根の小屋とオレンジの木が描かれています。杉戸洋の作品は夢の中の世界の影を探し求め、心の中の情景をパレットに落とし込み、幾何学的な作図は物語や絵本を読んでいるようなイメージを与えるのです。童画的な一面を残しつつ培ってきた色の価値を継承する一方で刷新しています。
杉戸洋の作品は自由な発想やみずみずしいイメージで描かれているのが魅力です。
塩田千春(しおた ちはる)
生年月日 |
1972年〜 |
出身 |
大阪府 |
ジャンル |
インスタレーションパフォーマンスアート |
塩田千春はベルリンを拠点にして日本のみならず世界で活躍している現代アーティストです。
ブラウンシュバイク美術大学に在籍中、マリーナ・アブラモヴィッチに師事をしました。作品は「生きることとは何か」・「存在とは何か」といった人類の根源的なテーマが用いられ、自身の経験や記憶のイメージをビジュアル化しています。空間に糸を巡らせた展示や大量のボロ靴を使った展示など、大規模なインスタレーションが特徴です。
2015年には第56回ヴェネチア・ビエンナーレで日本館代表に選出されました。そこで展示した作品『掌の鍵』は空間を埋めつくす赤い糸と結ばれた鍵、2つの舟で構成された大規模なものでした。同作は2016年にKAAT 神奈川芸術劇場で開催された帰国記念展「鍵のかかった部屋」で新たに構成され新作として展示されました。
2008年に平成19年度芸術選奨文部科学大臣新人賞、平成19年度咲くやこの花賞(美術部門)を受賞しています。
代表作:静けさの中で
制作年 2008年
塩田千春が幼少期に隣の家が夜中に火事で燃えた記憶から、インスピレーションを受けて制作されたインスタレーションです。燃えたグランドピアノと観客用の椅子が黒色の糸でつながり、空間全体を埋めつくし「死」を想像させます。音のないピアノは沈黙を象徴し、音楽を視覚的に受け取れるところが作品の特徴です。
まとめ
以上、注目の日本人現代アーティスト3人をご紹介しました。
- 名和晃平
- 杉戸洋
- 塩田千春
各アーティストの経歴や特徴、代表作品を解説いたしました。当記事が現代アートに興味を持つきっかけになれば幸いです。