マネが晩年に描いた作品の中でも、大作かつ謎を呼ぶ作品として有名な「フォリー・ベルジェールのバー」。
彼の作品は現代においても多くのアートファンを魅了していますが、中でもこちらの作品は不思議な印象を与えるため、より注目されています。
今回は、「フォリー・ベルジェールのバー」にスポットを当て、概要や秘密を紐解いていきましょう。
マネとは
マネは、パリの裕福な家庭に生まれた19世紀の写実主義を画家です。
17歳から画家を志し、同じく19世紀において代表な画家といわれるトマ・クーチュールに弟子入りしました。
順調にスキルを伸ばし、様々な作品展で賞を獲得するようになります。
その後、裸婦をモチーフにした名作「草上の朝食」や「オランピア」では世間からの大バッシングを浴びました。
結果的にサロン主流だった古典絵画に風穴を空けたことで「近代絵画の父」や「プレ印象派の画家」といわれ、当時の画家たちに多大なる影響を与えています。
マネの大作「フォリー・ベルジェールのバー」の概要
マネは物議を醸した「草上の朝食」や「オランピア」の他にも、たくさんの名作を残しています。
中でも謎を呼んでいるのが、晩年に描かれた「フォリー・ベルジェールのバー」です。
フォリー・ベルジェールとは
この作品の舞台となったバー「フォリー・ベルジェール」は、当時のパリに実在していました。
酒場だけでなくショーの上演もある店を「カフェ・コンセール」といいますが、フォリー・ベルジェールもそのひとつでした。
マネ自身もこのフォリー・ベルジェールの常連であり、美しく着飾りお酒やショーを楽しむ女性やステージを楽しんだそうです。
モデルとなったバーメイドの女性
「フォリー・ベルジェールのバー」の中で一際目を引くのが、大きく描かれた女性でしょう。
作品の制作に取り掛かった当時、マネは病を患っており、歩くことすらままならない状態でした。
そのため、アトリエにフォリー・ベルジェールをイメージしたバーカウンターを作りました。
さらに、フォリー・ベルジェールでバーメイド(娼婦)として働いていた女性を、モデルとして雇用します。
その背景として、中産階級や上流階級の人が集う華やかなフォリー・ベルジェールの裏には、売春婦の取引を行う秘密の場所という顔があったことが挙げられます。
どことなく虚ろに見えるモデルの女性は、こうしたフォリー・ベルジェールの光と闇を表現しているといえるでしょう。
鏡の向こうに隠された秘密
モデルの女性に目が行きがちな作品ですが、よく見ると背景には大きな鏡が描かれています。
モデル以外の人間は全て鏡の中に存在しており、見るものに不思議な感覚を与える作品です。
不思議さを助長しているのが、不可思議な構図。
女性に話しかけている男性の位置が不自然であることがわかるでしょう。
こうした実際にはありえないトリックを使い鑑賞者の視線を中央の女性に集めています。
その結果、鑑賞者自身がフォリー・ベルジェールの店内に迷い込んだような錯覚を与えており、「マネ最後の大作」ともいわれる所以です。
その他、鏡の中にはマネの友人たちも描かれています。
鏡に映る人々のタッチは粗く、詳細に描かれている手前のフルーツや酒瓶と対照的な点も見所のひとつです。
まとめ
今回は、19世紀のパリを代表する画家の一人「マネ」の大作「フォリー・ベルジェールのバー」を紹介しました。
マネの工夫が施され、謎多き絵画といわれる作品です。
それぞれの解釈を楽しみながら鑑賞するのも良いでしょう。
現在、「フォリー・ベルジェールのバー」は、ロンドンのコートールド・ギャラリーが所蔵しています。