鉛筆画を使い、空間を演出する作風で注目される橋本晶子。
細密でありながら変幻自在に変わっていくインスタレーションに興味を持っている方も多いでしょう。
今回は、橋本晶子の経歴と代表作を詳しく解説します。
1.橋本晶子とは
橋本晶子は、1988年生まれ東京在住の現代アーティストです。
2015年武蔵野美術大学大学院造形研究科修士課程日本画コースを修了し、現在は同大学の非常勤講師としても活躍しています。
細密に描かれる鉛筆画をメインに用いたインスタレーションが彼女の作風です。
単に、作品を空間に展示するだけでなく、入り込む光と影、設置する家具などを絶妙に取り込みながら空間の変化をも作品の一部として表現しています。
こうした制作方法を「風景を作る」と述べており、鑑賞者を「風景」の中に誘ってくれるような作風が特徴です。
彼女の作品は、2020年に開催された資生堂主催の公募展「第14回shiseido art egg」にてグランプリ賞を受賞しました。
また、2018年にはパリで個展を開くなど、国内外問わず活躍が期待されるアーティストです。
2.橋本晶子の代表作
続いては、橋本晶子の代表作を3つ紹介します。
2-1.Ask him
「Ask him」は、グランプリ賞を受賞した「第14回shiseido art egg」で審査対象となった作品です。
白で統一された空間に単色で描かれた鉛筆画を展示する橋本晶子ならではの作品となっています。
例えば、巨大なトレーシングペーパーに、まるで実際の窓にかけられているような透明なカーテンが描かれている一方で、何も描かれていない紙が空調で揺れるように展示され、鑑賞者は絵と空間を同時に体感できる点が大きな特徴です。
そのほか、作品のなかに描かれた植物のシルエットが、別の作品として表現されているという工夫もあり、空間全体が作品となっていることに気付かされます。
2-2.I saw it, it was yours.
2021年に制作された「I saw it, it was yours.」も、橋本晶子の作風である鉛筆画と空間を活かしたインスタレーション作品です。
薄暗い展示室の中に鉛筆画が飾られ、その空間に入り込む光と影が巧みに利用されています。
鉛筆画は、平面的に飾られるのではなく、意図的に折られたものや一部が隠されたものなど、立体的に展示されることで空間との繋がりをより感じられる作品です。
2-3.Yesterday’s story
「Yesterday’s story」は、パリにてレジデンスをした際に制作されました。
滞在した部屋をそのまま展示空間としており、部屋にある小物や棚なども活かされています。
鉛筆画の線と実空間の線とが入り混じり、空間との関係性によって成り立つインスタレーション作品です。
暮らしの中で気に留めた光と影の関係性や、生活空間を感じながらじっくりと作り上げられています。
部屋の状態を把握している彼女だからこその表現といえるでしょう。
3.まとめ
今回は、橋本晶子の経歴と代表作について解説しました。
作品を展示して終わりではなく、展示することで生まれるストーリーを体感できる彼女のインスタレーション。
絵画と空間とを交互に鑑賞したり、絵画を含む空間全体をまとめて眺めたりと、長時間楽しむことができる作品といえます。
2022年にも作品展を開催しており、今後もさらなる活躍が期待されるでしょう。