アメリカの大量消費社会の光と影を描いたアンディ・ウォーホルは商業イラストレーターから新しいアートの開拓に成功した珍しいタイプです。
彼はなぜ成功したのか、名言や生い立ち、代表作から読み解いていきましょう。
- 1.アンディウォーホルとは
- 2.アンディウォーホルの名言19選
- 1.美しくない人なんて、僕は出会ったことがない。
- 2.孤立することが悪いなんてちっとも思わない。僕にとっては最高の気分さ。
- 3.物事を見すぎることで、それが持つ意味がまったく見えなくなることを僕は怖れる。
- 4.考えは豊かに、見た目は貧しく。
- 5.時が物事を変えるって人はいうけど、実際は自分で変えなくちゃいけないんだ。
- 6.誰もが15分間なら有名人になれる。いずれそんな時代が来るだろう。
- 7.人生って、繰り返し見る度に変化していく映像のようなものだ。そうだろう?
- 8.自分について何か書かれていても、その内容は気にしちゃいけない。大事なのは、どのくらいのスペースが割かれているかだ。
- 9.退屈なことが好きなんだ。
- 10.もしアンディー・ウォーホルのすべてを知りたいのならば、僕の絵と映画と僕の表面だけを見てくれれば、そこに僕はいる。裏側には何もないんだ。
- 11.好調なビジネスは、何よりも魅力的なアートだ。
- 12.人が死ぬなんて思えない。ちょっとデパートに行くだけだ。
- 13.お金を稼ぐことはアートだ。働くこともアートだ。ビジネスで成功することが最高のアートだ。
- 14.「誰もが15分間なら有名人になれる。いずれそんな時代が来るだろう」僕は60年代にそう予言したけど、それはすでに現実になった。僕はもう、この言葉には飽き飽きしているんだ。もう二度と言わない。これからはこう言う。「誰もが15分以内に有名人になれる、そんな時代が来るだろう」。
- 15.「誰もがみんなを好きになるべきだと思う。」
- 16.「なんでオリジナルじゃないといけないんだい?他の人と同じがなんでいけないんだ?」
- 17.「僕がこのような方法で絵を描いているのは、僕が機械になりたいからである。そして、僕がすること全て、機械のようにすること全てが、僕がしたいことなんだ。」
- 18.「アーティストがもう無理だと感じたら、すぐやめるべきだ。そして罪悪感を感じることなくスタイルを変えることができるはずさ。」
- 19.「I really don’t care that much about “Beauties.” What I really like are Talkers.」
- 3.名言から見るアンディウォーホルの思考法
- 4.アンディウォーホルの代表作10選
- 10位『Colored Mona Lisa』落札価格$56,165,000
- 9位『Coca-Cola [3]』落札価格:,285,000
- 8位『Sixty Last Suppers』落札価格:,875,000
- 7位『Race Riot』落札価格:,885,000
- 6位『Men in Her Life』落札価格:,362,500
- 5位『Four Marlons』落札価格:,605,000
- 4位『Green Car Crash (Green Burning Car I)』落札価格:,720,000
- 3位『Triple Elvis [Ferus Type] 』落札価格:,925,000
- 2位『Silver Car Crash (Double Disaster)』落札価格:5,445,000
- 1位『Shot Sage Blue Marilyn』落札価格:5,040,000
- 5.まとめ
1.アンディウォーホルとは
誰もが見たことがあるであろうキャンベルのスープ缶やマリリンモンローの作品で有名なアンディ・ウォーホルは「ポップアート」の代表格です。
ポップアートは大量生産大量消費の社会問題をテーマにして、雑誌や広告、漫画、報道写真を扱う、現代美術の芸術運動のひとつです。
また、美術だけでなく、ロックバンドのプロデュース、「インタビュー・マガジン」誌の創刊や『アンディーウォーホルの哲学』などの執筆活動など、様々な活動を行いました。
簡単にアンディウォーホルの経歴について紹介していきます。
〈〜1940年代〉
アンディウォーホルは1928年8月6日にチェコスロバキア共和国(現・スロバキア共和国)で敬虔なカトリック教の両親のもと、三男として生まれました。小学3年生の頃、「シデナム舞踏病」(自分の意思では制御できない、急速で不規則な動きが顔や手足にでる病)を患いました。
このことがきっかけで学校に通えなくなってしまい、引きこもりになってしまうのです。
家の中ではラジオや映画に触れ、絵を描くなど生活を楽しみ、美術家「アンディウォーホル」の基盤が作られました。
1945年にシェリー高校を卒業し、美術教師を夢見てピッツバーグ大学に入学しますが、途中退学。カーネギー工科大学(現在のカーネギーメロン大学)に入学し、商業美術を学びます。
在学中には学生美術雑誌「cano」のアートディレクターを務めました。
高校卒業時にはScholastic Art & Writing Awards(米国全土の若手アーティストや作家に送られる賞)を受賞しています。
〈1950年代〉
大学卒業後、ニューヨークに渡ります。彼の最初の仕事は「グラマー」誌に靴のイラストと広告を提供することでした。
1950年代は商業と広告アートに専念し、靴メーカーのイスラエル・ミラー社でデザイナーとして働きました。この靴の広告で知名度を高めていきます。
1952年にはミラー社の広告デザインが新聞広告美術の部でアート・ディレクターズ・クラブ賞を受賞します。
また、「VOGUE」などのファッション誌広告も手がけ、同年には初の個展をニューヨークで開催しました。
着々と有名になっていきましたが、まだファインアート(純粋美術)とみなされていなかったため、展示の評判は良くありませんでした。
50年代にはその後、何度か個展を開きますが、数点の絵しか売れませんでした。
このころに鼻を整形し、トレードマークのカツラを着用し始めます。
本名もアンドリュー・ウォーホラからアンディーウォーホルに変更します。
〈1960年代〉
1961年からキャンベルスープやドル紙幣など身近にあるものをモチーフに描き始めました。1962年5月には「TIME」誌で「キャンベル・スープ缶と缶切り」が紹介されました。
この作品は博物館で公開された彼の初めての作品です。
彼の作品がファンアートとして評価されるようになったのは1962年7月9日にロサンゼルスのギャラリーで行なわれた個展からと言われています。
この個展で初めてキャンベルスープ缶の展示をし、西海岸でのポップアーティストのデビューを飾りました。
同年にはシルクスクリーンプリントを用いて、作品の量産を始めます。
彼の代表作の一つである「狙撃されたマリリン」はこの時期にマリリンモンローの突然死にあたって作成されました。この作品は彼の知名度を大幅に向上させました。
そのほかにもロックバンド「ヴェルヴェット・アンダーグラウンド」をプロデュースし、1967年のデビューアルバム『ヴェルヴェット・アンダーグラウンド・アンド・ニコ』のカバージャケットを考案しました。
バナナの絵は見たことがある方も多いのではないでしょうか。
ジャケットには「Peel Slowly and See(ゆっくり剥がして、見ろ」と書かれ、バナナの絵はステッカーを剥がすと皮が剥がれ、果肉が現れる仕組みになっています。
1964年にはニューヨークにファクトリーと呼ばれるアトリエ兼スタジオを構えます。
ファクトリーには上流階級、下流階級関係なく出入りし、ハイカルチャーからアンダーグラウンドなどありとあらゆる人々が集まった無法地帯になりました。
1968年6月3日にファクトリーで彼は銃撃に遭いました。
銃撃したのはファクトリーの常連であったフェミニスト過激派のヴァラリー・ソラナスです。
この銃撃事件がきっかけでファクトリーは出入りや行動に規制がかかるようになり、栄光の時代が幕を閉じることになりました。
この事件は1995年に「アンディ・ウォーホルを撃った女 / I Shot Andy Warhol」として映画化されています。
〈1970・80年代〉
1970年代はビジネスに力を入れ始めた時期でもあり、1960年代に比べるとスキャンダルは少ない静かな年代になっています。
1975年に出版された著書には「お金を稼ぐことは芸術であり、働くことは芸術であり、良いビジネスは最高の芸術である」と残しています。
この頃は富裕層のパトロンや著名人のポートレイト作品に多くの時間をかけました。
最も有名とされるポートレイト作品が「毛沢東の肖像画」です。
当時のアメリカ大統領ニクソン氏の訪中をきっかけに作成されました。
2017年に香港でオークションに出品され1270万ドルで落札されました。
1974年には初来日を果たしています。
また、1983年から84年には日本企業のTDKビデオカセットテープのCMに出演。
カタコトの日本語を話すウォーホルが記憶にある方も多いのではないでしょうか。
ウォーホルは1987年2月22日午前6時32分に、マンハッタンで死去。彼の最後の作品は1986年に作成したレーニンのポートレイト作品でした。
〈小話〉
・カツラ
ウォーホルは、彼のトレードマークである「カツラ」についてとても敏感だったようです。
彼の最後のアシスタントをしていたベンジャミン・リウによると
「一度だけ気分を損ねてしまったのはいつも被っていたカツラのグルーを買ってきてと頼まれた時に、間違えてピエロ用のカツラのグルーを買ってきてしまった時」だそうです。
・同性愛者
ウォーホルは同性愛者解放運動以前から同性愛者として公然と生きていました。
2.アンディウォーホルの名言19選
ウォーホルは数々の名言を世に送り出しています。
ここでは日本語訳も一緒に紹介していきます!
1.美しくない人なんて、僕は出会ったことがない。
I’ve never met a person I couldn’t call a beauty.
2.孤立することが悪いなんてちっとも思わない。僕にとっては最高の気分さ。
I don’t see anything wrong with being alone, it feels great to me.
3.物事を見すぎることで、それが持つ意味がまったく見えなくなることを僕は怖れる。
I’m afraid that if you look at a thing long enough, it loses all of its meaning.
4.考えは豊かに、見た目は貧しく。
Think rich, look poor.
5.時が物事を変えるって人はいうけど、実際は自分で変えなくちゃいけないんだ。
They always say that time changes things, but you actually have to change them yourself.
6.誰もが15分間なら有名人になれる。いずれそんな時代が来るだろう。
In the future everyone will be world-famous for 15 minutes.
7.人生って、繰り返し見る度に変化していく映像のようなものだ。そうだろう?
Isn’t life a series of images that change as they repeat themselves?
8.自分について何か書かれていても、その内容は気にしちゃいけない。大事なのは、どのくらいのスペースが割かれているかだ。
Don’t pay any attention to what they write about you. Just measure it in inches.
9.退屈なことが好きなんだ。
I like boring things.
10.もしアンディー・ウォーホルのすべてを知りたいのならば、僕の絵と映画と僕の表面だけを見てくれれば、そこに僕はいる。裏側には何もないんだ。
If you want to know all about Andy Warhol, just look at the surface of my paintings and films and me, and there I am. There’s nothing behind it.
11.好調なビジネスは、何よりも魅力的なアートだ。
Being good in business is the most fascinating kind of art.
12.人が死ぬなんて思えない。ちょっとデパートに行くだけだ。
I never think that people die. They just go to department stores.
13.お金を稼ぐことはアートだ。働くこともアートだ。ビジネスで成功することが最高のアートだ。
Making money is art and working is art and good business is the best art of all.
14.「誰もが15分間なら有名人になれる。いずれそんな時代が来るだろう」僕は60年代にそう予言したけど、それはすでに現実になった。僕はもう、この言葉には飽き飽きしているんだ。もう二度と言わない。これからはこう言う。「誰もが15分以内に有名人になれる、そんな時代が来るだろう」。
It’s the place where my prediction from the sixties finally came true: “In the future everyone will be famous for fifteen minutes.” I’m bored with that line. I never use it anymore. My new line is, “In fifteen minutes everybody will be famous.”
15.「誰もがみんなを好きになるべきだと思う。」
I think everybody should like everybody.
16.「なんでオリジナルじゃないといけないんだい?他の人と同じがなんでいけないんだ?」
But why should I be original? Why can’t I be non-original?
17.「僕がこのような方法で絵を描いているのは、僕が機械になりたいからである。そして、僕がすること全て、機械のようにすること全てが、僕がしたいことなんだ。」
The reason I’m painting this way is that I want to be a machine, and I feel that whatever I do and do machine-like is what I want to do.
18.「アーティストがもう無理だと感じたら、すぐやめるべきだ。そして罪悪感を感じることなくスタイルを変えることができるはずさ。」
If an artist can’t do anymore, then he should just quit; and an artist ought to be able to change his style without feeling bad.
19.「I really don’t care that much about “Beauties.” What I really like are Talkers.」
僕は「美人」をあまり気にかけない。僕が本当に好きなのは話す人だ。
3.名言から見るアンディウォーホルの思考法
ウォーホルは元々商業イラストレーターだったため、ビジネスに関しても長けています。
アートをシルクスクリーンといった誰でも大量生産できるもので表し、アートを使ってビジネスを成功させました。
また、最新のゴシップはすぐさまアートに取り入れることでも話題になりました。
また、彼の名言は固定概念を覆すものが多く見られます。
日常にある大量生産されたものを自分の作品に使用し、その作品を大量生産できる技法で制作する。
これは当時のアート界では考えられないことでした。
固定概念にとらわれないことが成功のコツなのかもしれません。
4.アンディウォーホルの代表作10選
代表作をこれまでのオークション落札価格ランキング順で紹介していきます。
10位『Colored Mona Lisa』落札価格$56,165,000
ニューヨークのメトロポリタン美術館のパンフレットに掲載された図版をもとにモナ・リザを増殖させたシルクスクリーン作品を1963年に制作しました。
制作される前年にはフランスからアメリカにモナ・リザが貸し出されました。
2015年にクリスティーズ(英国のオークションハウスで世界各国に支店を持つ)に出品されました。
オークション開催日:2015年5月13日
9位『Coca-Cola [3]』落札価格:,285,000
「Coca-Cola[3]」はウォーホルのポップアートの始まりと言われている作品の一つです。
この作品には機械のように正確に描く彼の傾向が初めて現れています。
このコカ・コーラは実際の瓶ではなく、新聞に掲載された広告をモチーフにしました。
ウォーホルは著作の中で「コーラはコーラであり、いかに高いお金を払ってもより良いコーラを得ることはできない」と語っています。
大量生産で一貫して同じ品質を維持したコーラで経済的、政治的平等を表現していると言われています。
2013年にクリスティーズ(ニューヨーク)に出品されました。
オークション開催日:2013年11月12日
8位『Sixty Last Suppers』落札価格:,875,000
レオナルド・ダ・ヴィンチの有名な作品「最後の晩餐」を使用した作品です。
「最後の晩餐」をモノクロで表現したものを60回繰り返し、幅10メートルの作品に仕上げました。
彼の晩年の作品の一つで、ミラノで行われた展覧会のわずか1ヶ月後に亡くなってしまいます。
最後の晩餐シリーズはこの他にも「The Last Supper(Pink)」など100以上のバリエーションが制作されています。2017年11月にクリスティーズ(ニューヨーク)に出品されました。
オークション開催日:2017年11月15日
7位『Race Riot』落札価格:,885,000
1963年にアラバマ州で起こった公民権運動の報道写真を使用した作品です。
モチーフになった写真は、写真家チャールズ・ムーアが撮影した3枚のうちの一枚で、ジョン・F・ケネディ元大統領が人種差別撤廃の法案を提出するきっかけになったと言われています。
この写真には黒人の抗議者に向けて警察が警察犬を放つ瞬間が捉えられています。
ウォーホルが手がけた作品の中でも政治色の強い作品になっています。
2014年にクリスティーズ(ニューヨーク)に出品されました。
オークション開催日:2014年5月13日
6位『Men in Her Life』落札価格:,362,500
ハリウッド女優のエリザベス・テイラーと三番目の夫、友人夫妻と写っている写真を使用しています。「LIFE」誌に掲載されたこの写真は仲の良い友人同士の夫婦に見えますが、テイラーは3度目の夫と死別した後この友人の夫と再婚し、スキャンダルになりました。
8度の結婚を経験しているテイラーの複雑な人間関係を暗示しているようです。
このシリーズは4作品しかなく、その中で一番大きな作品です。
2010年フィリップス・ド・ピュリー・アンド・カンパニーのオークションに出品されました。
オークション開催日:2010年11月8日
5位『Four Marlons』落札価格:,605,000
1953年に放送された映画『乱暴者』の主演俳優マーロン・ブランドの宣伝写真をモチーフに作成しました。
ウォーホルの全盛期と言われる1966年に制作された作品です。
この写真をもとに8パターン作成されています。
クリスティーズニューヨーク2014年にニューヨークのクリスティーズに出品されました。
オークション開催日:2014年11月12日
4位『Green Car Crash (Green Burning Car I)』落札価格:,720,000
実際に起こった事故や自殺者を描く「死と惨事」シリーズの1つで1963年に作成されました。
シアトル警察に追われて電柱に衝突してしまった車をジョン・ホワイトヘッドが撮影した写真です。
ウォーホルは彼の写真を使用して「死と惨事」シリーズを5作描いていますが、白黒以外の色を使用した唯一の作品になっています。
2007年クリスティーズ(ニューヨーク)に出品されました。6年以上ウォーホルの作品歴代落札価格1位でした。
オークション開催日:2007年5月16日
3位『Triple Elvis [Ferus Type] 』落札価格:,925,000
エルヴィス・プレスリー主演映画「燃える平原児」(1960年)の宣伝用写真をもとにした等身大サイズの作品です。
ウォーホルはこの映画の大ファンでした。この作品以外にも1人から11人までさまざまなパターンで制作。
2014年にクリスティーズ(ニューヨーク)に出品されました。
オークション開催日:2014年11月12日
2位『Silver Car Crash (Double Disaster)』落札価格:5,445,000
1963年に作成された「死と惨事」シリーズの作品。
縦2.43m、幅4mで左側のパネルには自動車事故の写真15枚が、右側は銀色のパネルになっています。
右側の銀色のパネルは死を表していると言われています。
この作品は長らく公開されず、2000年に26年ぶりに公開されました。
2013年にサザビーズ(ニューヨーク)に出品されました。
3人の入札者が競い合ったことから価格が高騰した結果、ウォーホルの作品史上最高額を大幅に更新し、2022年まで破られませんでした。
オークション開催日:2013年11月13日
1位『Shot Sage Blue Marilyn』落札価格:5,040,000
1位はマリリンモンローをモチーフに使用した作品。
1953年の映画「ナイアガラ」の宣伝写真を使用して制作しました。
彼女をモチーフにいくつかの作品を発表していますが、その中でもこの作品はさまざまな理由によって価格が高騰したと考えられています。
ここでは3点説明していきます。
1つ目の理由は1960年代に作成された点です。
1960年代ウォーホルが最も創造性を発揮した年と言われています。
マリリンモンローの他に、キャンベルスープの缶やコカ・コーラなどの作品もこの年代にあたります。
また、制作スタイルを写真を使ったシルクスクリーンに変えた時期にもあたります。
落札価格TOP5は全てこの年代に作成された作品になっており、彼のキャリアにおいて重要な年代であったことが伺えます。
2つ目の理由はシルクスクリーンにおいて新しい技法で作成された点です。
シルクスクリーンに制作スタイルを転換した1962年から1964年にかけての制作方法は2層の黒インクの間に黒以外の色を塗っていたため、正確に並べることが難しく、黒が滲んでしまっていました。
それを改善するために1964年半ばからウォーホルは新しい技法で作成を始めます。
ポジ(被写体の明暗がそのまま再現されている写真画像)をシルクスクリーンで使うフィルムに印刷し、それを下絵としてキャンパスに写し、より正確に色を出せるようにしました。
しかし、この方法はとても時間がかかり、せっかちであった彼はこの技法であまり製作しませんでした。
そのため『Shot Sage Blue Marilyn』はこの新しい技法が使われた数少ない作品の一つとして価値が上がりました。
彼がテーマとした大量生産とある意味対局にある技法であることもあまり使われなかった理由の一つかもしれません。
3つ目の理由は珍しいエピソードがある点です。
この作品は1964年に赤、オレンジ、ライトブルー、セージブルー、ターコイズの5色で作成されました。セージブルーが今回紹介している作品です。
これらの作品は彼のアトリエである「ファクトリー」で保管されていました。
その年、彼の友人の一人であるドロシー・ポドバーがファクトリーを訪れ、積み上がった作品を見て「撮影してもいいか?」と聞かれ、ウォーホルは許可しました。
するとドロシーは小型のリボルバーを取り出し、絵を撃ち抜いてしまいました。彼女は「撮影してもいいか(shoot)」ではなく、「撃ってもいいか(shoot)」と聞いていたので作品を撃ったのです。
その撃たれた作品は修復され、『Shot Marilyn』と名付けられました。このエピソードが作品に付加価値をもたらしました。
2022年にクリスティーズ(ニューヨーク)に出品されました。開始4分で1億9500万ドルまで達します。
ウォーホルの作品史上最高額を更新しただけでなく、20世紀の美術品としても史上最高落札額、アメリカ人アーティストの史上最高落札額を叩き出しました。
オークション開催日:2022年5月9日
5.まとめ
今回はアンディ・ウォーホルについて、彼の名言、作品についてまとめてみました。
いかがだったでしょうか。
彼の名言はなぜかすごく心に刺さりますね。なぜ成功したのか、なぜ評価されているのか少しでも伝わったら幸いです。
彼の名言や作品は他にもたくさんあるのでぜひ調べてみてください!