画家、芸術家、漫画家などさまざまな顔を持つ多彩なアーティスト赤瀬川原平。
世間に衝撃をもたらした「千円裁判」で有名になった作家でもあります。
今回は、赤瀬川原平が持つ独自の視点を紹介するとともに、代表作や作品が見られる場所も見ていきましょう。
1.赤瀬川原平とは
赤瀬川原平は、1937年に横浜で生まれました。
戦中戦後の混乱の中で育ったため経済的には辛い時期もありましたが、ユニークなことが好きな明るい少年だったといいます。
高校までは大分県で11年間過ごした経験があり、そこで建築家の磯崎新や現代美術家の吉村益信と出会いました。
その後、名古屋に転居て旭丘高等学校美術科に入学し、現代美術家である荒川修作や画家・演出家となる岩田信市らと学校生活をともにします。
高校卒業後は、武蔵野美術学校油画科に入学。
しかし、経済的な理由から退学することになりますが、退学後も精力的に創作活動を続けました。
1-1.多ジャンルで活躍した芸術家
武蔵野美術学校を退学した赤瀬川原平は、日本アンデパンダン展や読売アンデパンダン展など自由出品ができる美術展に参加。
創作活動を継続したことから、1958年には初めての個展を開催します。
その後、1960年になると現代美術家の吉村益信や篠原有司男とともに前衛芸術グループ「ネオ・ダダイズム・オルガナイザーズ(ネオナダ)」を結成しました。
以降も精力的に芸術活動を続けながら、1970年ごろになると漫画やイラストの制作も始めます。
さらに、1979年には「尾辻克彦」というペンネームで小説を書き始めるなど、多彩な芸術家として知られるようになりました。
1-2.千円札裁判
赤瀬川原平といえば「千円札裁判」を思い浮かべる方も多いでしょう。
「千円札裁判」とは、赤瀬川原平が本物の千円札と見間違うほど精巧な作品を作り上げたことにより、通貨及証券模造取締法違反で訴えられた出来事です。
赤瀬川原平は、「観察」を大切にしており、千円札を模した作品もその精神が込められたものでした。
そもそも拡大模写した作品だったことに加えて、裏面は白紙であり、使用を目的としたものではなかったものの執行猶予付きの有罪判決となっています。
2.赤瀬川原平の代表作
赤瀬川原平は、独創的な作品を多数生み出しています。
その中から、3つを紹介します。
2-1.復讐の形態学(殺す前に相手をよく見る)
まさしく「千円札裁判」の中心となった作品がこちらの「復讐の形態学(殺す前に相手をよく見る)」です。
ルーペで見た千円札を拡大模写した大型の作品で、数ヶ月もの時間をかけて克明に表現しました。
拡大模写だけであれば裁判沙汰にならなかったものの、同作品を紙幣の大きさに縮小してコピーしたことから、偽造紙幣と判断されています。
実際、絵画作品にはふさわしくない題材ですが、この頃から赤瀬川原平の表現方法は、絵画や立体からパフォーマンスへと変化しており、ものに対する興味が薄れたことの現れかもしれません。
2-2.宇宙の罐詰
赤瀬川原平は、対象物を徹底的に観察して、そこに見られる「おかしみ(可笑み)」を表現していました。
こちらの「宇宙の罐詰」もそのひとつで、タラバガニの缶詰の外側に貼られていたラベルを内側に貼り付けられています。
一見すると誰でも作れる作品に見えますが、赤瀬川原平による思考の転換が表されているからこそ有名になったといえるでしょう。
内側にラベルを貼ることで、内と外が逆転し、内側が表になります。
つまり、外側にあった世界が内側に内包されることになり、ここに面白みを感じた作品です。
2-3.ヴァギナのシーツ(二番目のプレゼント)
赤瀬川原平が世に知られるきっかけとなった作品が、24才の時に制作した「ヴァギナのシーツ(二番目のプレゼント)」です。
生々しい肉体を表している赤いパーツはタイヤのゴムチューブで作られ、それに無機質な真空管が取り付けられています。
この作品が作成された時代、真空管は非常にハイテクなアイテムであり、こうした廃品を集めたアート自体も珍しいものでした。
しかも、そもそも廃品を活用しているため、展示後には廃棄されていました。
そのため、こちらの作品も1994年に再度作られたものです。
3.赤瀬川原平の作品が見られる場所
赤瀬川原平の作品が見られる主な場所は以下の通りです。
3-1.東京国立近代美術館
東京都千代田区に位置する東京国立近代美術館では、19世紀末から現代の作品を収集しています。
特に近代日本の作品を多く所蔵しており、赤瀬川原平の作品も多く所蔵している点が特徴です。
代表作である「ヴァギナのシーツ(二番目のプレゼント)」や「模型千円札」も所蔵されています。
3-2.千葉市美術館
千葉県にある千葉市美術館でも赤瀬川原平の作品を所蔵しています。
中央区役所との複合施設として1995年に開館し、2020年に拡張リニューアルオープンしており、気軽に立ち寄れる美術館です。
4.まとめ
今回は、多彩なアーティスト赤瀬川原平について解説しました。
「観察」により見えてくるものごとの「おかしみ」を表現する作風は、赤瀬川原平の真骨頂です。
それが顕著に現れたことから通貨及証券模造取締法違反で有罪判決を受けていますが、その精巧さがわかる出来事ともいえるでしょう。
近年、海外でも日本の前衛美術が注目されており、赤瀬川原平の作品も高値で取引されています。
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