東京を拠点に活躍するアーティスト・平子雄一(ひらこゆういち)。
彼は〈植物と人間の関係〉を独自の視点で探りながら、その世界観を世に発信しつづけ、国内外で注目を浴びています。
共感性の高く親しみやすい植物のキャラクターが登場し、自由自在な色彩で描かれるペインティングや、ぬくもりを感じる彫刻作品を目にしたことがある方もいることでしょう。
この記事では、そんな平子雄一の作品のテーマや代表作品についてまとめ、作品の画像とともに解説しています。
また、彼の作品を実際に見ることのできる場所についても情報をまとめています。
平子雄一について、この記事を読んで一緒に理解を深めていきましょう!
1.平子雄一について
平子雄一は、現在活躍中の東京都在住のアーティストです。
〈植物と人間の共生〉をテーマに、森の生き物に偶然出会ったような、不思議で秘密めいた作品の中の世界観が国内外で評価されています。
1982年に岡山県に生まれ、2006年に24歳でイギリスの ウィンブルドン・カレッジ・オブ・アート(Wimbledon College of Art)のファインアート( Fine Art Painting)学科を卒業しています。
キャリア初期から一貫して世界観を貫いており、国内のアートコンペやマーケットでその存在感を示しつつ、日本以外も、コペンハーゲン、ロッテルダム、シンガポール、台湾、韓国など、国外でも精力的に発表を続け、積極的な展示への参加を経て、着実に人気を獲得してきました。
彼の作品は、ペインティングを中心に、ドローイングや彫刻、インスタレーション、サウンドパフォーマンスなど、多岐にわたっています。
2.平子雄一の作品のテーマ〈植物と人間の共生〉
平子雄一の作品に込められているテーマは〈植物と人間の共生〉です。
彼がこのテーマに至った理由が気になりますよね。
実は、イギリスの大学でファインアートを専攻していた平子は、在学中にはスタイルが定まっていたわけではありませんでした。
卒業制作で作品について思い悩むなかで、
”自然が多い田舎で育った日本人の自分と、海外の大都市にある大学で美術を学ぶ日本人の自分という、そのふたつの要素が組み合わさったときにできるものがあると気がついた”
と自身のインタビューで語っています。
結果的に、卒業制作では自然物と人工物の組み合わせを描いた作品を発表し、そこから現在につながるテーマ〈植物と人間の共生〉につながっていきます。
私たちも普段生活していると、木々を目にしたり、植物を目にしたりしますよね。
自身の現状を振り返る中で、大きなテーマが生まれたということはとても興味深いです。
平子雄一の作品は、ただ植物と人間の関係性を独自の視点で描きなおしているだけでなく、小さいころ好きだった絵本や、自分の中の精神世界のような内的なものも含んでいるように感じられます。
無邪気に子どもが描いているような絵の具の色の使い方や、筆のタッチなどがそれらのノスタルジーを思い起こさせるのではないでしょうか。
また、2013年ごろから、平子は木で出来た彫刻や陶芸などの立体作品にも取り組んでいます。
絵画と向き合う中で、二次元の限界を感じたこと、絵に入り込むための奥行きを空間に作るために、空間に三次元で表せる立体作品を作り始めたそうです。頭部がモミの木のようになっている人物や、つぼ、本といったモチーフが、絵画作品にも立体作品も共通して表れており、両方の表現を行き来しながら、自分の世界観を深めつつ拡張していっているように感じられますね。
平子の作品に繰り返し登場する、頭部がモミの木(クリスマスツリー)のようになっているこの興味深い人物キャラクターには、具体的に名前が名づけられてはいません。
この人物は、人の行動によって、植物の扱われ方が変わっていくし、それに応じて関係性も変わっていく中で、それらを象徴する人物が必要だと平子が考えたことから生まれました。
具体的な関係性とは、ブラジルのアマゾンの熱帯林がどんどん焼かれていて、経済的に豊かになるために地下資源を採掘しようとすることや、自然環境を大切にするために人々がアクションを起こすことなどが例に挙げられます。
日々を過ごす中では忘れてしまいがちですが、未来を支える大切なことですよね。
自身のインタビューにおいて、平子はこの人物を「彼」と言い表し、「彼」は登場人物でありながら、世界の一部であり、自分の一部でありながらも、鑑賞する私たちであると答えています。
作品の中で増えていくイメージの中で、形を変化させながらも登場していく「彼」の存在はとても興味深く、これからも平子が作品を作っていく中で核となりつづけるのでしょう。
表情がないこの人物は、見る人の感情によって喜怒哀楽が反映されるようでもあります。
その曖昧さや、コントロールできない部分を内包していることも、平子の作品の大きな魅力の一つです。
参考元:https://bijutsutecho.com/magazine/interview/21074
3.平子雄一の代表作
次々と新しい作品を生み出している平子雄一。
頭部がモミの木のようになっている人物キャラクター「彼」は作品の中にさまざまなアプローチで登場します。
今回は、最新の作品の中から3つご紹介していきましょう。
3-1.《Gift 01》
一見夢の中の光景のようなこちらの作品は、テーブルの上には果物やパン、魚がそれぞれの器に盛られて置かれて楽しげな雰囲気。
中央左下に座る「彼」はきっとここの住人なのでしょう。猫や植物や絵画、ステレオに囲まれて豊かそうな暮らしをしているように見えますが、表情を読み取ることはできません。
この作品で特筆すべきなのは、画面の上半分です。
あふれんばかりの花が左上に、積み上げられた本たちが右上に描かれていますが、下半分の世界と目線の高さが合わないのが分かるでしょうか?「彼」が座る空間は見下ろすように描かれているのに対し、上の部分は真横からみたように描かれており、わざと一枚の中で空間のバランスが崩されているのです。
しかし、グレーで描かれた木が横断していることで、違和感なくそれらの境界をつないでいます。自然と人間との境界線を問う平子独自の表現であり、現実世界の延長線上にある光景を描いているのです。
3-2.《Gift 14》
私たちには「花は美しいもの」という先入観が常につきまといます。
しかし、現代の世界においてはそれは常に本当でしょうか?
「彼」は大切そうに果物のような何かを抱えるポーズでこちらに対峙しており、切実さを感じることができます。
色彩が私たちに与えるイメージは大きく、鮮やかでカラフルなイメージの強い平子の作品の中で登場するモノクロの色遣いは、胸を突かれてどきっとしますよね。
この作品において、画面左では先入観を取り払い見るべき本来の自然の姿、画面右では刷り込まれた概念を通したカラフルな世界を表しています。平子は、「彼」を通して両者のあわいを見るものに問いかけているのです。
この《Gift 14》と先ほどの《Gift 01》は作品集の刊行を記念して、平子雄一初となるシルクスクリーン作品が抽選販売されました。両作品とも限定75エディション(発行部数)で、限られた人のみが手にすることができました。
3-3.《Wooden wood 25》
こちらは平子の彫刻作品です。130センチほどの高さの「彼」が、まっすぐに立っています。直立している像なのに、なぜかユニークな印象を与えるのは、手で彫られた質感や、平子のセンスで彩られたポップな色づかいのためでしょうか。
数々の彫刻作品を発表してきた平子ですが、「彼」はこのように腕を垂らし、まっすぐに立ったポーズで制作されることがほとんどです。
その姿はどこか、自然の経過を目にしながらじっと立ってきた木のようでも、現代に立ち尽くす私たちのようでもあります。
3-4.平子雄一の作品をもっと知りたいなら作品集がおすすめ!
平子雄一の作品をもっと知りたいという方には、作品集をおすすめします。
2021年に、平子雄一初の作品集『GIFT HIRAKO YUICHI』が刊行されました。
作品集の表紙はこのために描かれたドローイングであり、KOTARO NUKAGAで開催された個展「GIFT」で発表されたペインティング、彫刻、ドローイングを中心に、最新作までが並びます。
作家のアトリエに招かれたような写真から始まり、画材道具など、平子が制作する様子が垣間見えるような構成で、図版ページには筆の質感が味わえるクローズアップ写真も掲載された、細部まで楽しめる一冊です。
- 発行:カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社
- 発売:美術出版社
- 本体価格:4,000 円+税
- 一般発売日:2021年9月17日
参考元:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000208.000010983.html
4.平子雄一の作品の購入方法
現在、平子雄一の作品は、ネットなどで購入できる場合もあることが確認されています。
その場合、個人が出品するオークションサイトか、アート作品の通信販売サービスが主な手段となっています。
しかし、現代アートマーケットで注目を集めている若手アーティストの1人であるため、流通は非常に少なく、ネットに流通しているタイプのプリント作品を多く手掛けている作家でないこともあり、常に動向をチェックしておくのがよさそうです!
5.平子雄一の作品を見る方法
5-1.練馬区立美術館
現在、練馬区立美術館では、平子雄一の作品を観ることができる展覧会を開催しています。
平子雄一×練馬区立美術館コレクション inheritance, metamorphosis, rebirth
[遺産、変形、再生]
2022.11.18(金)~ 2023.02.12(日)
平子自身が美術館のコレクション10点を選び、それらの作品からさまざまな要素を取り込んだ新作を制作し、コレクションとともに公開する内容です。
展覧会タイトルは、美術館のコレクションという遺産(inheritance)を平子という別のアーティストが変形(metamorphosis)し、現代的な感覚のもとに再生(rebirth)させるという意味合いで、作家自身が名付けました。時間と空間を超えた対話的な試みであり、過去から未来につながる創造の可能性を探ります。(公式HPより)
新作絵画は、縦3.3メートル、横10メートルの巨大なスケールで描かれており、実際に観ることでより平子雄一の世界観を感じられそうです。
実際に行くことを検討している方のために、情報を以下にまとめました。また、チケットは事前予約制ではなく当日チケットカウンターで購入する形となっています。
<開催案内>公式HPより引用
■会場
練馬区立美術館 2階展示室 〒176-0021 東京都練馬区貫井1-36-16
■会期
2022年11月18日(金)~2023年2月12日(日)
■休館日
・月曜日 ※ただし1月9日(月・祝)は開館、翌1月10日(火)は休館
・12月29日(木)~1月3日(火)
■開館時間
10:00~18:00 ※入館は17:30まで
■観覧料
・一般300円
・高校、大学生および65~74歳200円
・中学生以下および75歳以上無料
・障害者(一般)150円、障害者(高校・大学生)100円
・団体(一般)200円、団体(高校・大学生)100円
■主催
練馬区立美術館(公益財団法人練馬区文化振興協会)
■協力
KOTARO NUKAGA
■アクセス
西武池袋線中村橋駅下車 徒歩3分 詳しくはこちらをご覧ください。
出典:平子雄一×練馬区立美術館コレクション inheritance, metamorphosis, rebirth [遺産、変形、再生] | 展覧会 | 練馬区立美術館 (neribun.or.jp)
5-2.KOTARO NUKAGA
平子雄一は、額賀古太郎が運営するギャラリー「KOTARO NUKAGA」に所属しています。
公式サイト:KOTARO NUKAGA
六本木と天王洲アイルに位置するこのギャラリーでは、国内外の先鋭的なアーティストと共に独自性の高いギャラリープログラムを展開しています。
2022年には、KOTARO NUKAGA (六本木)において、平子雄一の個展「FOOTPRINTS」が開催され、2021年には、個展「GIFT」がKOTARO NUKAGA (天皇洲)で開催されており、今後も平子の作品が観ることができるであろうギャラリーです。
どの展覧会も入場は無料で、作品を堪能できる空間になっています。
平子の次の展覧会について、SNSで情報をチェックしておくとよさそうですね。
KOTARO NUKAGA(@kotaro_nukaga) • Instagram写真と動画
6.まとめ
この記事では、現代アーティスト・平子雄一の作品のテーマや代表作などについてまとめてご紹介しました。
平子の作品のテーマは一貫して〈植物と人間の共生〉であり、代表作を読み解いていく中では自身の作品によく登場する「彼」を通じて平子が伝えたいメッセージや、作品に込められた思いを感じられたでしょうか。
現代社会における自然と人間との境界線を問い直すような彼の姿勢は、豊かな色彩感覚や独特の造形能力、繰り返しでてくるモチーフによってより説得力を増していますね。
また、現代若手アーティストの中でも注目を浴びる平子ですが、作品集や展覧会などで作品についてもっと深く知ることのできる機会があることも分かりました。
記事を読んで、平子雄一について知る中で、現代アートの世界をもっと深く知りたいと考えた方や、作品を購入したいと考えた方も多いのではないでしょうか。
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今後、平子雄一の作品が取り扱われる可能性もあるでしょう。
本記事を読んで平子雄一の作品に興味を持った方は是非、Artisを利用してさまざまな現代アートにも視野を広げてみてくださいね。