ビジネス的な常識の限界を突破するオフィス×アート、アートで育むギフティのクリエイティビティとは | Artis

ビジネス的な常識の限界を突破するオフィス×アート、アートで育むギフティのクリエイティビティとは

「キモチが循環する社会へ」をタグライン(企業のスローガン)にオンライン上で手軽にギフトを送れるサービスを運営する株式会社ギフティ。同社では2021年6月に現在の新しいオフィスに移転したのをきっかけに、社内にアートを展示、社員のクリエイティビティへの働きかけを行っています。

Chief Creative Officerとして活躍される長谷川踏太さんに、ビジネス空間にアートを置くことの意味や、アートの選び方などについてお話を伺いました。

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長谷川踏太

株式会社ギフティ Chief Creative Officer 。1972年東京生まれ。1997年英国ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(RCA)修士課程修了。その後、ソニー株式会社デザインセンター、ソニーCSLインタラクションラボ勤務などを経て、2000年ロンドンに本拠を置くクリエイティブ集団TOMATOに所属。インタラクティブ広告から創作落語まで、そのアウトプットは多岐にわたる。2011年から2019年9月までワイデン+ケネディトウキョウのエグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクターを務める。英国D&AD審査員、東京TDC審査員、 creativity50 (byAdage 2015) に選出。2019年株式会社ギフティ入社。

アートにふれ興味を持つことをきっかけに、全社員がクリエイティブな考え方をするカルチャーを作る

——まずは長谷川さんがギフティで果たしている役割を教えてください

クリエイティブのカルチャーをギフティの中に作るのが僕の役割です。デザイナーだけでなく、営業や企画、人事など社内のあらゆる部門の人たちが、アートに触れることで、考え方や発想にいい変化が現れることに期待しています。

ビジネス上の効率は日々求められますが、それと相反する文化的なアプローチも大事にしようというのがギフティの考え方です。人間らしさを大事にする会社ともいえますね。

2021年に移転をして今のオフィスになる際に、インテリアや内装、アートは全部僕とボードメンバーで監修しました。元々クリエイティブ文化がないまっさらなところから作り始めたので、継ぎ足しでない分、統一感も出たと思います。移転のタイミングでミッションとステートメントを刷新したので、それをフィルターとしてギフティらしい空間を作っていきました。

——オフィス全体として遊び心があると同時に統一感を感じます。ギフティのオフィスには何点くらいアートがあるのでしょうか

全部で20数点あります。元々候補があったわけではなく、予算とオフィスの方向性が決まって僕がゼロから選びました。ギフティのアートディレクションやデザインの方向性は僕がメインで作っていましたし、ミッションやステートメントはチームで一緒に作っていたので、コンセプトに合わせてスムーズに選択購入することができたと感じています。

——移転のタイミングで初めてアートを置いたということで、アートに初めて触れる社員も多かったのではないかと思います。空間を作る上でどのような工夫をしましたか

絵の下にあるRFタグにスマホをかざすとアーティストの情報を見れるようにしました。作者や作品名を書いたプレートだとちょっと見た目がややこしくなるので。これだと情報のアップデートもできる。押し付けはしないけど興味ある人は情報に触れられるようにしています。

【RFタグ】

電波(電磁波)を用いて、RFタグに登録されているデータを非接触で読み書きするシステム

RFタグが全てのアートの下に設置され、スマホをかざすと表示されるリンクから情報を確認できる

アートを置くのにふさわしい空間を作るということも重視しました。この部屋はこの絵を飾るからオレンジ系のカーペットにしようとか。全部カーペットの色を合わせているわけではないですが、トーンが合うかどうかは計算をしています。アートを置くための計算をして作った空間に身を置くことで美的センスが積み重ねられる。何十年か経った時に社員の感性がどうなっているかはワクワクしますね。

社員からは「この絵が好きです」みたいに感想をもらうことはあります。あとは営業の人がZoomで会議をしていると、相手から「後ろに見える絵はなんですか」と聞かれることがあるみたいですね。

会社の10年、20年後を見据えて。ビジネス上の常識的な考え方とは全く違うアートに触れることで考え方やものの見方が変わる。

——般の人にとってビジネス空間にアートというのは、組み合わせとしてなかなか想像しにくいのではないかと思います。アートを置くことで社員や会社にはどんな効果が現れますか。

アートを置いたからといって何かすぐに変化や効果が現れるというものではありません。消臭剤とは違うので(笑)。

ただ、アートを置いてある空間にいることで美的センスや柔軟な思考能力は育まれると考えています。10年後、20年後に社内にクリエイティブな人材が育っている、クリエイティブな空気感のある会社になるための助けになるのがアートなのではないかと。

置くアートによっても会議室の雰囲気は大きく変わる

アートは常識的でない考え方やアプローチで作ってるものが多いので、アートに触れることで刺激されるんですよね。花だったら綺麗だなで終わりですが、「なぜこういう絵なんだろう」「なぜこれを描こうと思ったんだろう」と考えさせるじゃないですか。

そんなふうに考えてみる訓練を、日常の隙間でアートを通して行うことができます。例えば打ち合わせが終わった後にこの会議室に飾ってある写真をぼーっと眺めて「何でこんな写真を撮ったんだ」と考えることが大事。それの積み重ねで考える癖がつくと、普通のものを見たときにもそういう見方ができるようになります。

デザイナー以外の人、例えば営業の人や事務職の人でも物を考えたり問題解決しようとするときに、普通のアプローチ以外で達成できる方法を見つけたりできるかもしれない。オフィスでアートに触れることがそういうきっかけになればいいなと思っています。

出汁みたいな「なんかいいんだよね」の味わい。クリエイティブやアートなら言語化せずにいい感じが伝わる。

——長谷川さんの考えるクリエイティブ及びアートの役割について教えてください

ギフティのクリエイティブでは「なんかいいんだよね」というのを大切にしたいと考えています。食べ物で例えれば出汁。なんで美味しいかわからないけれども、いい出汁がきいてるんだろうなってあるじゃないですか。

チーズみたいにこれをかけたら美味しいですっていうようなものではなくて。出汁みたいになんとなく感じたり理解されるもの。それが「なんかいいんだよね」ということです。

ギフティーの入り口には同社のラッピングペーパーを滝のようにセッティング。訪れた人にイメージを伝えている

それで、なぜこれを大切にするかというと、再現性が低いから。要はパクリにくいんですよね。本にして「こうやったら会社が超いい感じになります」って書いてあったらみんなやるじゃないですか。そういうものって結果的に全員がやるから独自のカルチャーにはならないです。

会社の独自性とかアイデンティティというものがパクられない、言語化されない状態でにじみ出ていくようにするのが、クリエイティブが持っている役割なのかなと。そして、言語化せずに理解をさせていく一端を担うのが、こういった空間づくりおよびアートといえると思います。

オープンワークショップと出会ったロンドン生活でアートを身近に楽しむように。気軽に購入できる作品が入口になった。

——ご自身が最初にアートを購入した時のことを覚えていますか?また、大人になって本格的にアート収集を始めたきっかけも教えてください。

中学生の時に誰かアーティストのポストカードを買ったのが最初だったと記憶しています。アートブックも高くて買えないので2時間ぐらい立ち読みして、ポストカードを買って部屋に飾るみたいなことをしていました。

大人になってから15年くらいロンドンに住んでいたんですが、向こうでアートがぐっと身近になりましたね。よくあるのが、元郵便局や学校の建物みたいな広くて天井が高い所を、アーティスト達が自分のアトリエとして分割して借りていて。

ロンドンの思い出を語る長谷川さん

クリスマス前になると普通の人が遊びに行っていいオープンスタジオという日があって、そこで彼らの作品の小さいものとかB級品を売ったりするんです。本当は高くて買えないようなアーティストの廉価版みたいなものがある。僕の学校の先生はそこで数千円で買ったルーシー・リーの作品をたくさん持っていました。今買ったら数百万円するんですけど。

そういう文化に触れたことが、私が大人になってからアートを購入する入り口になっています。だから、今でもあまり大きな画廊でギャラリーの人に説明をされながらアートを選ぶという購入の仕方はしないですね。

——できるだけ生身の出会いを大切にしているということですね。長谷川さんがアートを選ぶときの基準を教えてください

会社のアートを選ぶときは、先ほど述べたようにアートディレクションやコンセプトに合わせて選びますが、個人で選ぶ場合はもうピンときたものとしか言いようがない。2、3年前に購入した立花ハジメさんの活版は大きな作品でした。展示を見に行っていいなと思った作家の10万円以内で売ってるようなものはちょこちょこ買います。陶芸や中国美術骨董なんかも好きですね。要するにバラバラです(笑)。

アート選びは感覚8割、情報2割。最後はその価格を出しても自分が欲しいと思えるかどうか。

——これから初めてアートを購入しようという人に選び方のアドバイスをお願いします

8割くらいは自分が好きとかピンときたという感覚に従うのがいいと思います。残り2割が情報ですね。アーティストの知名度、どういうところで展示をしてきたか。肩書きや歴史を補足的な判断材料にするけど、最後はやはり感覚ですね。

飾るアートは形にこだわらず円形や縦に長いもの、会議室によっては複数を並べていたりバラエティ豊か

作品と価格のバランスも難しいですが、ついている価格を出しても自分が欲しいかどうかに尽きると思います。お財布に1億円ある人にとっては10万円は安いかもしれませんが、コツコツ10万円貯めた人だったらすごく考えたほうがいいと思いますし。答えはありませんが、自分が自由に使えるお金の何%の価格なのかは一つの購入基準になるかもしれません。

編集後記

テクノロジーや情報が凄まじいスピードでアップデートされていく現代。ただ知識があるだけではなくどう考えるか、どう共感してもらうかがより重要になってきている。そんな時代にアートのような我々の心に感覚的に響いてくるものを用いて「なんかいいんだよね」を伝えることは、社員のクリエイティブな思考力及び組織に対するエンゲージメントを高める上で非常に面白い切り口だと感じた。ギフティが10年後どのような社風の組織になっているか注目したい。

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